2022年9月8日木曜日

松本清張『眼の壁』新潮文庫 初出昭和32年

松本清張は『点と線』で有名になったが、その同じ年に発表したのが本編である。時刻表を使った『点と線』は多くの旅行好きに関心を持たれたであろう。それに対して本作は、その発端は手形詐欺という経済犯罪である。ややなじみがないという読者も多かろう。

某会社は手形詐欺により3千万円騙し取られる。今の3千万ではない。昭和32年の3千万円である。会社の名誉のためにも公に出来ない。直接かかわった課長は社長から怒鳴られ、心痛のあまり自殺してしまう。その課長の下にいた社員が本編の主人公で、自殺した課長のためにも真相を解明すべく探偵の真似を始める。知り合いの新聞記者にも協力を頼むようになる。まず直接の相手だった男の事務所に行くと、謎めいた美女の秘書がいた。この美人は事件に関係あるらしく、女としても主人公は気になる。事件の解明は会社の弁護士も実はやっており、その手先の探偵が殺される事態になる。そればかりでなく弁護士までも誘拐される。政治家が関係しているようだ。記者はその政治家を探る。名古屋から岐阜方面に事件の鍵があると分かる。警察も探偵殺害の犯人を追っており、その犯人の素性が分かったものの捕らえられない。弁護士の死体が見つかり、また岐阜の山でほぼ白骨化した死体が見つかる。どうもこれが殺害犯人らしい。しかしすっかり白骨化しているので4か月位前の死亡らしい。主人公たちが追っていた犯人であるとすれば死んだのが早過ぎる。この謎が分からない。

最後に解決するが、多くの殺人や謎の仕掛けがあり、初期の松本清張らしく張り切って書いたのであろうと思われる。

0 件のコメント:

コメントを投稿