2022年3月31日木曜日

『文学こそ最高の教養である』光文社新書   2020

光文社古典新訳文庫の宣伝本である。ただ宣伝用のパンフレットでも役に立つ情報が書いてあるものがある。本書はそういうところを集めた本である。内容は光文社古典新訳文庫で出された本の訳者と文庫編集部の対談を公開で行ない、それを収録している。取り上げている翻訳は『マノン・レスコー』『消しゴム』『三つの物語』『失われた時を求めて』『ヴェネツィアに死す』『だまされた女/すげかえれた首』『幸福について』『ロビンソン・クルーソー』『すばらしい新世界』『書紀バートルビー/漂流船』『カメラ・オブスクーラ』『絶望』『賭博者』『方丈記』『崩れゆく絆』『ソクラテスの弁明』の光文社古典新訳文庫本である。読んでいて勉強になるところがあり一読の価値がある。

本書の価値を大きく損なっているのは、聞き手になっている文庫編集部である。誰でも知っているような知識をひけらかし、うるさいとしか思えない。外国のインタビュー集を読むと、聞き手が受ける側と対等に扱われていて、聞き手が重要視されていると分かる。この新書は聞き手が本の著者として名前が載っている。本当は聞かれる側が主体なのに、その理由が解説に書いてあるが全く説得的でない。ただ聞き手の自己顕示欲が強いためとしか思えない。先に書いたように大した聞き手とは思えないのに。更に企画に関与した者にも巻末に文を書かせている。読者にとってはどうでもいい文である。なぜこうも裏方である筈の編集担当が名を売ったりしてしゃしゃり出てくるのか。理解に苦しむ。

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