2022年3月23日水曜日

ゲーテ『親和力』 1809

極めて仲の良い夫婦がいる。夫エードゥアルトは友人を自宅に招こうとする。2人でうまくやっている妻シャルロッテは反対する。しかし夫は友人の大尉を招く。妻は養女オティーリエを寄宿学校から引き取る。この4人の共同生活が始まる。そのうち、エードゥアルトはオティーリエに恋するようになる。女の方もしかりである。シャルロッテは大尉に惹かれる。大尉も同様である。夫婦共に後に来た2人と恋仲になるのである。大尉は仕事があって家から去る。後にエードゥアルトも戦争に行く。

シャルロッテは妊娠し男の子を産む。なぜか大尉にそっくりであった。オティーリエは赤ん坊の面倒をみる。しかしある時、誤って男の子を湖に落として死なせてしまう。悲歎にくれる二人の女のところへエードゥアルトと大尉が戻ってくる。エードゥアルトはオティーリエへの思慕が止まず、一緒になってくれと頼むが、オティーリエは何も言わず食事もとらない。オティーリエは死ぬ。後にエードゥアルトも亡くなる。

ゲーテの小説であり、近代小説とは違って、恋情を別にすればあまり人間の感情を露わに書いていない。普通は赤ん坊が死ねば女たちは号泣するだろうし、自分の責任だと痛く感じるはずである。その辺は明瞭に書いていない。死ぬわけだから内心の痛みは大いにあったということだろうが。

佐藤晃一訳、世界の文学第5巻、中央公論、昭和39

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