2021年4月26日月曜日

山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ 2018

本書は、ストーリーとして歴史を描き、年号を出さないという方針のもとに書かれた世界史である。構成としてはあちこちの世界の各地域に飛んで記述するのではなく、地域ごとの歴史を書く。ヨーロッパとか中東とかインド、中国など古い時代ではそれぞれの地域の歴史をまとめて書いている。その後は一体化する時代として、西洋人が東洋など他の地域に乗り出した時代以降は横のつながりで書くという構成である。

書き方の話以前で、どういう内容を取り上げているかを見ると何十年か前の世界史とは随分違うような気がする。中東の歴史をこんなに詳しく教えようとはしなかった。また中国は昔からそれなりの記述があったが、更に量を増している感じがする。最近の非西洋の重視、実際に政治的経済的に重要性を増している地域だからだろう。ただ書き方の点では気になるところがある。歴史というのはどうしてもある視点、価値観、世界観から書かざるを得ない。そうでないと書けないのである。どういう事項を、記述の対象として選んだか、それをどう書くかは著者の見方によるからである。例えば、第二次世界大戦前後の記述で、ファシズムを悪である、対照的に社会主義はスターリンが悪人だったので良くなかった、などと記述してある。これでは昔と同じである。社会主義はファシズムと変わらない、いや一層悪い体制である。なぜなら理論的に「正当化」されているので何十年も自由の束縛のみならず百万単位、いやそれより桁の多い犠牲者を出させた。史上最悪の体制である。現在ならそう分かっている。それをなぜ書かないか不思議である。

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