2021年4月8日木曜日

柴田南雄『音楽史と音楽理論』岩波現代文庫 2014

 

日本の音楽史を軸に、対比として西洋音楽史が書かれている。これまでの音楽の歩み、いかにして人間が音楽に対してきたか、について述べている。包括的に音楽の流れを理解しようとする試みである。日本の音楽の歴史と西洋のそれが、同時期で良く似ているところがあれば指摘し、比較音楽史の体をなしている。この対応は、西洋音楽史で古典派=ロマン派の時代、日本史で言えば江戸時代後期から明治時代、で劇的に変わる。同時代の西洋音楽はまさに創造の絶頂期というか、今でも鑑賞や研究の中心となっている時期である。それに対して日本の音楽は江戸時代前期で創造が枯渇し、後期からは演奏様式の変化が見られる程度という。明治になって西洋音楽が怒涛のように入ってきた時代は受け入れで一杯だった。もっともこの時期が西洋音楽との初めての出会いでない。キリスト教が入ってきた時代、一緒に音楽も入って来たのである。このキリシタン音楽についてページを割いている。作曲家である著者らしく第二次世界大戦後の作曲家界や演奏に詳しく勉強になる。もともとは放送大学の教材で1988年に刊行された。

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