2020年12月15日火曜日

バルザック『ラブイユーズ』 La Rabouilleuse 1841~1842

 

全部で3部に分かれる。そのうち第1部は、イスーダンという仏中部の町の出身の女がパリに来て、その息子フィリップと弟ジョゼフの物語。兄フィリップは見栄えが良く、軍人として出世し母親の愛情と期待を一身に集める。弟ジョゼフは容姿が劣っていて、母からの愛が乏しく画家志向である。フィリップは戦争での活躍は目覚ましかったものの、戻ってからは放蕩に身を持ち崩し、家族等から金を盗み出すなど悪行を平気でする。優しいジョゼフや母、伯母は一生懸命、フィリップを助けようとするが、とうとう最後はブタ箱行きになる。

2部はフィリップを助けるためイスーダンに帰り親族の協力にすがろうとする母、弟だが、その前に田舎で起きた事件とその後が語られる。ラブイユーズと呼ばれる少女を見つけた祖父は家に引取り、育てようとする。ラブイユーズとはあだなで、少女は初めて祖父に見つけられた時、川で漁のため小枝付の枝で川を叩いていた。これを川揉みといい、ラブイユーズとは川揉み女の意。老年だった祖父はラブイユーズを育て上げるが手をつけなかった。やがて祖父は死ぬ。息子は、これがフィリップ、ジョゼフの母の兄で、ラブイユーズを親父同様、好きになる。最初は従順だったラブイユーズだったが、そのうち権力を持つようになる。町に伊達男の軍人マックスがいて徒党を組み、乱暴狼藉を働いていた。この男がラブイユーズを好きになり、相手も同じ気になる。二人で何とかボケ化している家の主人から財産を巻き上げようと企んでいた。そこにジョゼフと母親が帰ってくる。これら邪魔者に財産を取られてはなるものかとマックスはジョゼフに無実の罪を押し付けた。その頃、パリで囚われていた兄フィリップが釈放され、イスーダンでの母と弟の災難を知るとやって来る。第1部ではどうしようもない悪人だったフィリップはここでは軍人の素質を発揮し、悪人マックスを退治する英雄になる。一度、伯父とラブイユーズを結婚させる。まもなく伯父が亡くなると今度は自分がラブイユーズと結婚する。

その後は第3部で、また元のようにフィリップは悪人になるが、出世して高い地位を得る。母の死も期待しているくらいだ。ジョゼフとその仲間たちがフィリップを懲らしめようとする。革命騒ぎで財産を失い、アフリカに行く。アラブ人相手の戦いで、捕えられ死刑になる。ラブイユーズは夫から見捨てられ、惨めな最後を遂げる。ジョゼフは資産家の娘と結婚し、画家を続ける。

吉村和明訳、藤原書店、2000

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