2020年12月3日木曜日

湯川秀樹『本の中の世界』 2005年


 湯川秀樹が本について書いた随筆を集めたものである。いずれも60年くらい前の執筆になる。

湯川はまず子供の時から読んできた本を挙げている。荘子を初め中国の古典が多い。学者一家の出身だから本に触れる機会があったのは当然である。中国の古典にまず親しんだのは当時の知的状況のせいもあろう。わが国は長い間、中国の古典が知識人の共通の教養だった。また続く章でも「文章軌範」という古い中国の名文を集めた書を挙げている。そのあとは近松の浄瑠璃や山家集などの詩歌である。ともかく湯川は本を読み始めた時から文語文になじみ、読んでいるのである。正直現在となっては羨ましい気がしないでもない。文語は形式が整っており、音楽的である。もちろん今さら文語の復活などできるはずもない。口語文への移行は完全に望ましいとして行なわれた。ただ世の中ある一つの選択が完全に他に勝ることはないだろう。

本書は元は岩波新書として昭和38年に出た。

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