2020年8月1日土曜日

東京の合唱 昭和6年

小津安二郎監督、90分、無声映画。

高校の体育の授業から映画は始まる。その一人、岡田時彦は後に保険会社勤めになる。不況期で、どの位ボーナスがもらえるか同僚と不安がっている。社長室に呼ばれ渡される。岡田は年配の同僚が悲しそうな顔をしているので聞くと、馘になるとの返事。契約した契約者が立て続けに死亡して大金を支払った。責任を取らされるのである。岡田は理不尽だと言い、社長に抗議すべきだとみんなに呼びかける。結局、岡田が代表して社長室へ乗り込む。社長と言い合いをしているうちに相手を突くようになり、岡田は即刻解雇となる。

岡田には妻の八雲恵美子、幼い男女の子供がいる。娘役は高峰秀子がしている。男の子は父に二輪車を買ってきてくれとねだり、岡田は約束していた。岡田が帰ってくる。しかし二輪車は勝ってこず、代用品を買ってきて長男はふくれるばかりである。八雲に岡田は馘になったと告げる。大卒なのでへんな仕事にはつけず、いつまで経っても就職口が見つからない。

高峰が病気になる。入院させた方がいい。幸い入院で高峰は回復するが、治療費のため着物はみんな無くなった。岡田はある日、恩師(斎藤達雄)に会う。食堂を始めようと斉藤は言う。岡田に仕事がなければ手伝わないか誘う。八雲が子供たちを連れて列車に乗っていると、サンドイッチマンをしている岡田を見つける。後で八雲は岡田にあんなみっともないことはしないでくれと頼む。岡田は恩師であると告げ、就職口を捜してくれるかもしれないと返事する。数日後、恩師を囲んでかつての生徒たちの会が、その食堂で開かれる。斉藤の所へ手紙が来た。斉藤は岡田を呼ぶ。就職口が見つかった。栃木県の女学校の英語の教師の口である。岡田と八雲はしばらく黙っている。八雲は言う、また東京に戻れる日がくるかもしれない。恩師と元生徒たちの会合は続いていた。

昭和初期の不況が背景である。大卒なのでサンドイッチマンは恥ずかしい、田舎に行くのは島流しのようなものだと、現在でも内心はそう思うのが普通だろうが、映画で明示的に言わせない。別に偏見という意識は誰にもなかった時代である。現在観ると価値観が変わっているので、そんなところが目につく。

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