2018年5月19日土曜日

スー・クレボルト『息子が殺人犯になった』 A Mother’s Reckoning 2016


 息子が殺人犯になった――コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズII-16)
著者はあのコロンバイン高校銃乱射事件の犯人の一人の母親である。
 13人の生徒等を殺害した後、犯人の二人は自殺した。銃社会で銃による殺人事件が多いアメリカとはいえ、本事件は文字通り世界を震撼させた。

本書は著者が事件当日を振り返るところから始まる。息子が犯人と分かる。その日以降、以前は全く想像も出来なかった生活を余儀なくされる。第一部は事件後の地獄のような毎日と過去の家族の生活を振り返り、息子のそれまでが描かれる。第二部は、このような犯罪が起きた理由を母親として真剣に考えている。
犯罪が起こると被害者の悲劇は言うまでもないが、加害者の家族が受ける不幸も計り知れない。自分の息子が殺人鬼と知った母親はどう思うのか。当時者でなければ想像も出来ないであろう。

本書を読むと母親の苦悩はよくわかる。また母親の人となりは極めて優秀な人物に見える。親が優秀だから子供が劣等感を持ち、犯罪につながるといったわけでもなさそうだ。
どんなに親が子供に配慮しても、愛情を注いでも犯罪は防げないものだろうか。
死後、息子が鬱病を患っていたと知る。鬱は極めて自殺願望の高い病気である。共犯の友人は精神病質で犯罪志向が高い。著者の息子は自殺するつもりで大量殺人を行なった。
この本でも自殺に対する偏見を正す意見が述べられている。

ともかく、悲劇や事故、間違いは人間だからどうしても起こる。それに対する責任とは、謝って終わりではない。他者も、責任ある者を糾弾して終わりにすべきではない。
同様の悲劇を二度と、というのは無理にしても起こる確率をできるだけ下げるよう努力することである。
本著はその努力をしており、本書を意義あるものとならしめる所以である。
仁木めぐみ訳、亜紀書房、2017

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