2019年3月26日火曜日

コルネイユ『ポリュークト』 Polyeucte 1643

コルネイユの5幕劇、宗教を扱っている点が異色。
時代は古代ローマ、キリスト教を迫害していた頃、場所はトルコとカスピ海に挟まれた地域であるアルメニア。

ここの総督に任命されているフェリックスの娘ポーリーヌ。彼女は元々ローマ時代、騎士のセヴェールを愛していた。しかし父親の命令でアルメニアの貴族ポリュークトと結婚した。
セヴェールはアルメニアの地にやってき、未だポーリーヌを愛しており、それを彼女に告げる。しかし今ではポリュークトの妻となったポーリーヌは貞節を守る。

ポリュークトは友人に感化されキリスト教徒となっていた。偶像破壊の挙に出て捕まえられる。義理の息子の暴挙に怒り狂うポーリーヌの父親。ポーリーヌはあくまで夫についていくつもりである。愛するポーリーヌの嘆きを見てセヴェールはポリュークトの助命に動く。
甲斐もなくポリュークトは従容として殉死する。それを見たポーリーヌは自分もキリスト教徒になったと告げる。生存中は自分を裏切ったポリュークトを罵っていた義父も、義理の息子の死に様、娘の回心を見て自分もキリスト教徒になると言う。セヴェールも感動する。

殉教が主題の劇であるが、今では自分の娘を出世の具にしか使わない、勝手なポーリーヌの父親が気になる。父親が娘の生死与奪権を持っていた昔の話である。
岩瀬孝訳「コルネイユ名作集」白水社、1975

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