2019年2月25日月曜日

スタンダール『パルムの僧院』 La Chartreuse de Parme 1839

10代の時に読んで以来の再読。正直以前の読書では十分理解できなかった。再読で政治状況を扱った部分が多いとわかり、改めて子供には理解しにくいのも無理がないと感じた。

普通、主人公の青年ファブリスの自由な生き様を描いた小説とされる。しかし小説の中ほどではファブリスを愛するがゆえの、叔母の公爵夫人による宮廷政治での駆け引きに紙数がかなり割かれている。この辺りでは公爵夫人が主人公でないかと思ってしまうくらいである。ファブリスなど世間知らずの勝手に生きる子供にしか見えなくなる。

正直19世紀初めのイタリアの宮廷政治はなじみがない。ファブリスが下賤の者に関わって投獄される。正当なのか。有罪無罪は権力者の意思でどうにでもなるのか。小説中では正当ではないと書いてある。いずれにせよ現在の我々には縁の遠い展開である。

ファブリスが読者に印象を残すのは、小説の初めの方のナポレオンの戦争に馳せ参じるところと後半の恋愛に夢中になるところである。共に自分の意志に従い行動する。この辺を中心に見ればファブリスに関心を持てるだろう。

ファブリスは登場人物ほとんどに愛される。その理由は彼が美貌の持ち主で貴族だからである。スタンダールのもう一人有名な主人公、ジュリアン・ソレルと比較すると共に美青年であるが、ジュリアンが平民の出で野心家であるのに、ファブリスは貴族の出身である。平民のジュリアンに共感できるのか、自らに忠実な感情に従って生きるファブリスに惹かれるのか。
大人の政治と若者の恋という要素がこの作品にある。それでややこしく親しみにくいのか、豊かな内容とするのか、様々な評価があるだろう。

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