2019年2月28日木曜日

ディケンズ『ボズのスケッチ』(上)岩波文庫、2004年

ディケンズの処女作Skeches by Boz 1836は小説以外にも随筆を含んだ雑集であり、本岩波文庫ではそのうち短篇小説12篇を上下で刊行している。
ボズのスケッチ―短篇小説篇〈上〉 (岩波文庫)
(上)には6篇、「ボーディングハウス盛衰記」「ポプラ並木通りでのディナー」「花嫁学校感傷賦」「ラムズゲートのタッグス一家」「ホレイショー・スパーキンズの場合」「黒いヴェールの婦人」の諸作を含む。

ボーディングハウスでは同名の下宿屋での主人夫妻、下宿人たちのバタバタを描く。個性ある下宿人らの結婚騒動などディケンズ的。ポプラ並木では、その息子への遺産を狙っている、いとこの家に、主人公の独身男は晩餐に招かれる。そこでの体験から甥に遺産をやるものかと意志を固める。花嫁学校では、国会議員の令嬢を託される。気がふさいでいる令嬢は舞踏会で恋人に会って駆け落ちする。最悪の失態に国会議員は怒る。ラムズゲートは、いきなり遺産が転がり込み成金になった庶民一家が、とんでもないペテンに会う。ホレイショーは、すっかり貴公子かと一家の娘が思い込んだ男の真相が最後に暴かれる。黒いヴェールはヴェールの婦人に招かれた若い医師が病人の実際を知る。極めて不気味な雰囲気のディケンズならではの短篇。

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