2023年10月22日日曜日

フィルポッツ『闇からの声』 A voice from the dark 1925

イギリスの小説家フィルポッツのスリラー小説、退官した刑事が英国西部の海岸に面したホテルに泊まりに来る。そこで不気味な体験をする。夜中に子供の叫ぶ声が聞こえるのである。

このホテルに長期間滞在している老婦人に事情を聞く。一年前、病弱な子供がまさに元刑事が泊まっている部屋で亡くなった。その事情を調べると、夜中に子供は怖い目に会わされていたらしい。恐ろしい仮面を見せられて神経が参り、元々身体が弱かったため死に至った。この犯人ははっきりしている。叔父の貴族であり、下手人はその召使いである。自分が貴族の地位を継ぐため正当な権利を持つ甥を殺したのである。

証拠がないため刑事訴追は出来ず、元刑事は天に代わって悪人を成敗しようとする。元刑事は悪人どもに悟られないよう注意して、ものすごく遠回しに接近する。復讐譚なのだが、自分の復讐ではなく、悪人に天誅を下すというやや変わった小説である。(橋本福夫訳、創元推理文庫、1963年)

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