2022年4月30日土曜日

善き人のためのソナタ Das Leben der Anderen 2006

フォン・ドナースマルク監督、独、132分。

1984年の東ドイツが舞台。国家秘密警察に勤める役人が主人公。反体制活動をしているとみられる作家宅に盗聴装置を仕掛ける。それで凡てを盗聴し、報告するのが主人公の役目である。主人公は組織の長が国に裏切り行為をしていると分かる。直属の上司に話しても伏せておくよう言われるだけである。自分たちの身に不利が生じる可能性が高いからだ。主人公は自分の仕事の責任者たちの言動に痛く失望する。

見張っている作家の愛人の女優は国家に秘密を売り、高官の情人となっている。それを主人公は作家に間接的に知らせる。それでも作家は女優を愛し続ける。作家の愛情を知った主人公は同情し、盗聴監視をやっているように見せかけ、実際は盗聴で知った事実を上司に知らせなくなる。愛人の女優が逮捕され、タイプライターの隠し場所を主人公は吐かせる。作家宅に乗りこんだ警察は隠し場所にはないと分かる。女優は家から飛び出し、トラックに轢かれる。主人公は、タイプライターは自分が隠しておいたのに、と死に際の女優に告げる。流石の無能の警察上司も主人公を職から外し、閑職に追いやる。

4年後、ベルリンの壁は崩れる。数年後、作家はなぜ自分が監視されていなかったか、と高官に尋ねると、凡て監視していたという返事である。過去の自分に関する資料を見た作家は、ある人物が自分を庇っていたと知る。今は配達夫をしている主人公を車から見る。後に作家は本を上梓し、そのはしがきに主人公のコード名を書き、謝辞を捧げている。

東ドイツの監視社会のあり様が分かってよい。ただ主人公の描き方には疑問を感じる。組織の長や上司の不正を見てショックを受けるようにあるが、もう中年になっている主人公は世の中、不正が多いとは先刻承知してはずである。特に社会主義では特権階級の不正がひどかったので余計分かっていたと思われる。また後半から主人公は作家を助けるため、スパイ映画なみの大活躍をする。スパイの映画ではないか、と言われそうだが、今言ったスパイ映画とは実行不可能な離れ業で主人公が活躍する映画を指す。もう少し現実的な映画にしてもよかったと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿