2022年2月28日月曜日

筒井康隆『最後の喫煙者』新潮文庫 平成14年

著者の自選ドタバタ傑作集である。中身は奇想天外な空想科学小説というべきか。短篇集で内容は次のとおり。

「急流」「問題外科」「最後の喫煙者」「老境のターザン」「こぶ天才」「ヤマザキ」「喪失の日」「平行世界」「万延元年のラグビー」

「急流」は時間の流れが速くなり、それが加速していく。やや理解が難しい。全員一斉に時間が速くなれば困らないはずだ。もちろん一日が以前の半分で終われば、新1日の時間は旧2日のそれに該当する。ところがこの短篇では、自分と他の人の流れが違うので混乱する様が書いてある。地球の回転が速くなれば物理的にも色々支障が出てくるだろう。この小説では人々が右往左往する様子が書いてある。
「問題外科」では外科医師のとんでもない行動が描かれ、残酷な仕上がりである。「最後の喫煙者」は喫煙が禁止迫害され、最後の喫煙者となった語り手。
「老境のターザン」は今や高齢者になりかつてのように飛び回れないターザン。観光客用の演技をしていた。それが目覚め、年寄りらしく強烈な意地悪になり、観光客を人喰い人種に提供する。
「こぶ天才」は背中にこぶをつけると天才になるというので、猫も杓子も子供にこぶをつけさせる、その顛末。「ヤマザキ」は明智光秀の本能寺の変の後、いかにして秀吉は休戦して帰ったかの歴史小説。タクシーや電車が出てくる。
「喪失の日」は童貞喪失を計画する会社員はどう行動したか。結果はどうなったか。「平行世界」はこの世界と同じ世界が平行して、段々畑のようにあると分かった。上の自分や下の自分と会える。
「万延元年のラグビー」は桜田門外の変で井伊直弼の首を討ち取ったが、別の屋敷が奪う。その争奪で直弼の首をラグビーのボールのように投げていき、自分らの物としようとする。

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