2021年1月14日木曜日

バルザック『ニュシンゲン銀行』 La Maison Nucingen 1838

 

あるナイトクラブの一室で交わされる四人の男のお喋り、それを隣室の者が聴くという形の小説。四人のジャーナリストや投機師らが話す内容は、ゴリオ爺さんの娘の恋人のラスティニャックからの資産形成から始まる。恋人の夫であるニュシンゲンは銀行家で、いかにして財を成したかが物語れる。銀行の経営が危ないと見せかけ、債権者の所有を低額の証券に替えさせ、その後に銀行経営が健全であると分かって銀行の資産は上昇し、ニュシンゲンは大儲けする。

こういう方法で儲ける例はあろうし、小説の題材として面白い。フランスの経済の拡張期の話の例であろう。ただし実際の経済でこんなことしていたら信用を無くしてしまい、その後が立ち行かない。小説の読者は経済とはこういうものだと思う者が多いし、話を面白いと思うから成り立っている。

吉田典子訳、藤原書店、1999

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