2019年9月5日木曜日

シドモア『日露戦争下の日本』新人物往来社 2005年

本書は日露戦争時に日本の捕虜になった軍人の妻が、夫の世話をしにロシヤから松山の捕虜収容所までやって来て、そこでの見聞や感想を述べるという内容である。

本書は同じ新人物往来社から出た1991年に出た旧版で読んだ。その際には著者名はソフィア・フォン・タイルとなっていた。語り手の婦人である。その婦人による記録としか見えない。解説もそのように書いてある。
しかしながら読んでいくうちに違和感を覚えてきた。何しろ語り手の感想とはいえ、あまりに日本を美化し絶賛としか言いようのない記述が続く。本当にこれは事実の記録か、疑問を感じないわけにはいかなかった。その本には原書名や著者名の原語による表記、出版年は書いていない。そこでアマゾンの旧版の読者評を見て、本書がシドモア女史による創作と分かった。

シドモアは親日家の米婦人で、他に『シドモア日本紀行』(講談社学術文庫)も出ている。例のポトマック河畔の桜植樹にも貢献したそうで、日本政府から叙勲を受けたこともあるそうだ。
なお原書As The Hague Ordains, by Scidmoreはやはりアマゾンの洋書で調べると何種類か今でも出版されており、kindleでは安く入手できる。

ともかくこれで本書の真相が分かった。なぜ旧版では記録文学のような扱いで出されたのか。
新版の解説によれば、原書はかなり昔に入手したもので、そこには著者名がなかったという。
それで語り手の婦人名を使ったと。旧版出版後かなり話題になったそうだ。その後読者から本署の記述内容の間違いの指摘があった。更に著者がシドモア女史と判明したと書いてある。
シドモア女史によれば本書は歴史文学だという。

新版の解説に十全に納得したわけではないが、それより昔これほど日本を称賛する米人の婦人がいたと知った方が自分には意味がある。20世紀初頭、日本と米英は友好関係にあったと聞く。その後戦争になる。敗戦後、占領軍のアメリカは日本人に徹底的な劣等感を植え付ける教育を施す。これが日本人の自己認識の基礎となった。その半世紀前、一例とはいえこれほど日本びいきのアメリカ婦人がいた。歴史とは無常なものであると改めて思った次第。

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