2024年1月27日土曜日

ゴーゴリ『肖像画』 Портре́т 1835

二つの話がある。

第一部では売れない若い画家が画商で老人の肖像画を買ってくる。その絵を帰宅してから見ると怖いくらいである。夜中に肖像画の中の老人が抜け出てくる。老人が袖から袋を取り出すとそこには金が入っていた。こぼれた金の袋を画家は自分の懐にしまう。老人はまた絵の中に戻る。画家は寝、その後夢を見て更にそれがまた夢だったと、夢の繰り返しをする。起きて家主が警察署長を連れて家賃の催促に来る。あの老人の肖像画をいじっているとその額から金貨の入っている袋が落ちる。画家は大金持ちになる。立派な家に住み貴族の令嬢の肖像画を描いて評判になり、大先生、巨匠扱いされるようになる。後に若いイタリアで修行して来た画家の絵が評判になるが、その才能を認めたくない。いつの間にか自分の才能は枯れて凡庸な絵しか描けなくなっていた。自分の金で評判の絵を次々と買い取り、それを引き裂く。画家が死んだ後、そのアトリエで惨状が分かった。

第二部は競りで老人の絵が競売にかけられている。その絵を自分が買い取りたいと申し出た男が絵にまつわる話をする。父親が画家でその老人の肖像画を描いたのだが、老人は悪魔であったらしく次々とその絵の持主は不幸に陥った。だから自分が買い取り処分せよと父親からの遺言がある。そう話しているうちに肖像画は盗まれてしまっていた。(横田瑞穂訳、岩波文庫『狂人日記』1983年)

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