2022年7月28日木曜日

甲賀三郎『蟇屋敷の殺人』   昭和13年

戦前の探偵小説家として名高い甲賀三郎の長篇小説。昭和13年に公表。そういう古い時代の小説であるから、江戸川乱歩の長篇探偵小説のような犯罪冒険小説である。

丸の内の工業俱楽部の前に停まっていた車を調べると運転手が殺されていた。山の手にある富豪の車である。警察が調べても、富豪は知らぬと言い張り捜査に協力的でない。その邸宅が別名蟇屋敷と呼ばれている。その主人の趣味で多くの蝦蟇を邸宅内で飼っているからである。黒岩涙香の『幽麗塔』に出てくる蜘蛛屋敷を思い出す。探偵小説家が出てくる。これが警察に協力しようとする。その蟇屋敷に秘書として働いているのが、旧知の若い女であった。これを知ると探偵小説家はすっかり女を守る騎士気取りで、つまり女への恋で目がくらんだ男になり果てる。小説では屋敷内で殺人が行なわれるとか、のっぺらぼうの怪人が出没するとか、奇怪な仕掛けが出て、謎は深まっていく。

最後の謎解きは今なら禁じ手を使っている。今の基準では推理小説とは言えない。先に書いたように戦前の小説ならではの雰囲気を楽しむ小説である。(河出文庫、2017

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