2018年7月4日水曜日

マーク・トウェイン傑作選、柴田元幸訳 新潮文庫 平成26年


 ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)
書名は「ジム・スマイリーの跳び蛙」となっており、傑作選は副題である。

内容は「石化人間」「風邪を治すには」「スミス対ジョーンズ事件の証拠」「ジム・スマイリーの跳び蛙」「ワシントン将軍の黒人従者――伝記的素描」「私の農業新聞作り」「経済学」「本当の話――一語一句聞いたとおり」「盗まれた白い象」「失敗に終わった行軍の個人史」「フェニモア・クーパーの文学的犯罪」「物語の語り方」「夢の恋人」の諸編から成る。

書名にもなっている「跳び蛙」はあまりにも有名。「失敗に終わった行軍の個人史」は南北戦争に従事した語り手による体験記で、戦争自体のばかばかしさとそれに従軍した自分たちを呪う。解説にベトナム戦争時によく読まれたとあるが、むべなるかなである。
ところで相手方を射殺した語り手は「自分が何の恨みもない赤の他人を殺すこと」(p.174)を戦争の本質のように言っており、間違いではないものの、ただ戦争を個人個人の問題だけにしては十分でない。実際の戦闘は相手を殺さなければ自分が殺されるという意味でお互いに正当防衛なのである。戦争を始める、終わらせるのは政治である。戦争は「政治」と「戦闘」の領域がある。専ら後者の戦闘での、兵士の責任「だけ」にしてはいつまでも戦争はなくならないであろう。兵士に責任はないと言っているのではない。

「夢の恋人」は文字通り夢の話で、こんな夢を見たことがなくても既視感を思わせる内容である。「盗まれた白い象」と「フェニモア・クーパーの文学的犯罪」は既存文学への批判を意図するところがあり、前者は探偵小説、後者は文字通りクーパーを対象とする。

ところで作品の採用基準について触れたい。
元々新潮文庫には『マーク・トウェイン短編臭』(古沢安二郎訳、昭和36年)があった。本傑作選とかつての短篇集で重なっている作品は「跳び蛙」「農業新聞」「本当の話」の3篇である。本書の解説で訳者の柴田は旧版との差異化は図りたかった(p.247)と書いている。すなわち収録するにあたり前短篇集を意識しており、もし旧版がなければ別の作品も入っていただろうと思わせる。別の言い方をすれば、この傑作選は旧版を読むことを前提にしている。旧版に入っている「百万ポンド紙幣」は結構知名度のある作品ではないか。それほど傑作ではないと思った。それにしても実際に自分で読んで判断するしかない。

0 件のコメント:

コメントを投稿