2017年10月10日火曜日

伊藤 公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書 2017年



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因果関係を正しく測るための統計学手法の、実践を狙いにした解説書。
世の中には同じような動きから、直ちに一方が他方に影響しているとする説明が多い。それはそう主張したいという願望もあろうし、また統計学の基本を知らないための場合もあろう。
本書は単に相関関係を示しているのでなく、きちんと因果関係があるかないかを測る手法の概要をやさしく解説してある。

ここではランダム化比較実験、RDデザイン(回帰不連続設計)、集積分析、パネル分析が説明されている。
ランダム化比較実験(RCT)は、政策を実施するグループと基準になるグループを分け、その差で政策効果を測る方法である。その際、ランダムにグループ分けが必要である。そうしないと他の要素の影響が差に出てくるからである。

RDデザインは境界線を使って効果を調べる。例えば負担率が変わる境界線前後では結果にジャンプがある。そのジャンプの差によって、負担率の変化の効果を見る。当然ながら負担率以外の要因は制御されていなければならない。また境界線前後の効果に限られるという認識も必要である。

集積分析は階段状に変化するデータ、例えば所得税率の変化、を見て因果関係を測る。これも検証したい効果以外は変化していないという仮定を基に行われる。

パネル分析は、二つ以上のグループを時系列に見て、一つに政策が実施された場合、されなかったグループとの差に注目し、効果を見る。
これには政策実施以前に複数グループの動きが並行していなければならない。実施されたグループも、もし実施されない場合には、以前と同様の動きであったと言えなければならない。別の要因で動くなら比較のグループとの差が政策効果と言えないからである。

本書は統計学手法の実践への意義を強調してあり、政策決定にあたり実姉されるべきであろう。

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