2015年8月15日土曜日

ベーム『回想のロンド』 1968

オーストリアの代表的な指揮者カール・ベームの回想録。

ベームの名が記されているが、彼が執筆したのでなく語った内容をまとめたものである。その引き出し役となったのはハンス・ヴァイゲルという人である。本文は凡てベームの語りなのでベーム著でおかしくないのであるが、その話題の触媒役を務めたわけである。

回想録は故郷グラーツの幼年時代から始まり、父の勧めで法律の勉強をしたこと、またベームが正式に音楽の勉強をしたのはピアノや作曲などであって、指揮法自体は学校の教程で学んだものでないなどわかる。

指揮者としてのデビューは他の偉大な指揮者にも例があるように偶然というか命令されて行ったところ好評で、それから他からも引き合いがあり務めるようになったというものである。その後、ワルターやリヒャルト・シュトラウスなど偉大な先達との交遊、彼らから薫陶を受け指揮者としての出世階段を昇っていく。

正直、ベームなど歴史に名を残す大指揮者は音楽家として並外れた才能の持ち主であり、こういう回想録での記述がどの程度控えめなのか、あるいは本人が語っているように他人にも見えたか、わからない。そもそも評価に関して「客観的」な評価はないとも言えるのだからしょうがない。

この翻訳が出たのは1970年でまだベームが存命中であり、特に日本では熱狂的ともいえる彼の音楽ファンがいた。
あれから30年を閲した今読み直すと感慨深い。
高辻知義訳白水社1970

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