2015年5月19日火曜日

モーパッサン『死のごとく強し』 Fort comme la mort 1889

モーパッサン、39歳時の長編小説である。主人公の画家ベルタンと伯爵夫人の愛を軸にして、背景は世紀末のパリ上流社会である。

売れっ子画家のオリヴィエ・ベルタンはモデルになった伯爵夫人のアニーと恋愛関係になる。夫の伯爵は全く気がつかないようである。恋愛関係が続くうち、オリヴィエは夫人の娘であるアネートに惹かれるようになる。年齢の衰えを感じるようになった夫人は恋人が娘に関心を持つようになったことに気づき嫉妬する。

モーパッサンといえば短編でもよくわかるように、いかにも劇的というか興味ある展開を見せる話を書く作家という印象がある。

この長編では意外と淡々と話が進み、最後の締めくくりではやや事件が起こるものの、それまでは画家と夫人との恋愛感情のもつれや上流社会の説明などが続く。それでも読んでいて飽きさせない。
 
19世紀の貴族社会など全く縁のない世界だけに、どれだけ実態に近いのか想像もできないが、それだけに違和感も感じさせない。
田辺貞之助訳新潮文庫昭和45年改版

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