2023年11月15日水曜日

レオニード・グロスマン『ドストエフスキーの一日 ルーレテンブルグ』 講談社 昭和56年

ソ連のドストエフスキー研究者グロスマンが1932年に公表した、ドストエフスキーを主人公とする中編小説である。

原題のルーレテンブルグとはドストエフスキーが滞在した、ドイツの保養地であるヴィスバーデンを指している。ここで賭博に負け文無しになったドストエフスキーが過去を回想する形で話は進む。工科学校時代に始まり、ドストエフスキーが作家になった後、ペトラシェフスキー事件に巻き込まれ逮捕、死刑執行の寸前まで行った様、最初の妻マーシャとの出会い、兄の死後、裕福な伯母に無心に行った様子、アポリナーリヤとの関わり合い、賭博場での出来事。

ドストエフスキーの生涯の挿話を綴り、如何にして『罪と罰』の構想が浮かんできたかが書かれている。もちろんグロスマンの創作であるから事実そのものの記録ではないが、ドストエフスキーに通じている作者ならではの生き生きとした叙述に、ドストエフスキー愛好家は関心を持って読めるだろう。

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