2022年12月6日火曜日

松本清張『花実のない森』 昭和39年

主人公の若い男はようやく買った車でドライブの帰り道、夜の東京西郊外で二人の男女を乗せる。頼まれて乗せたのである。夫婦と称していた。しかし男が冴えない中年男であるのに対し、女の方はかなり魅力的に見えた。

新宿近辺で下ろし、後に車中に忘れ物があったと分かる。名刺入れとペンダントである。名刺入れから男の会社を訪ねる。またそのアパートに行ったのだが、出てきたのはあの乗せた女とは似ても似つかぬ中年女だった。つまり男は妻でもない若い女と一緒にいたのである。その女が気になってしょうがない主人公は女の捜索を始める。住んでいるアパートが分かった。訪ねて行ってペンダントは渡した。その場はそれ以上なくて帰った。次回訪ねると引っ越したと言われ驚く。

あの中年男もいなくなっていた。失踪したのである。箱根で男の死体が見つかった。主人公は箱根に行き、捜しまわる。女はある旧華族の者と関係があるらしい。華族のうち年配の女が滞在するホテルに、自分の恋人をメイドとして勤務させ動向を探る。主人公は件の中年男よりも前に死んでいた別の中年男、それがあの女と関係があるらしいと分かる。

年配の女に掛け合って、あの女を好きだ、見つけるにはどうしたらいいか聞く。下町の暴力団風の男の家にいると教えられる。主人公はそこから女を助け出すが、後ろから堀に突き落とされる。後に山口県の柳井市に行けと言われる。行ってみるとそこに女が主婦としていた。真相は、女は華族の一員だが中年の男を好きになる好みがあってこれまで複数の男と関係した。旧華族にとって不名誉極まるので、華族の兄が相手を殺していたのだ。

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