マシャール『鉄の輪』 昭和30年

 

南洋一郎の文による「世界名作探偵文庫」の一。

物語は葬儀屋の結婚式の場面から始まる。再婚である。幼い息子がいる。雇員の様子がおかしい。主人公の男は気になる。なぜなら彼は前科者でそれをこれまで隠していたからだ。昔主人を殺害したという身に覚えのない罪で投獄され、脱獄し改名して今の職業をやってきた。やはり雇員は警察であった。悟った男は息子を連れて結婚式から逃げ出す。

警察が追う逃走劇。なんとか逃げおおせる。ただしこれからどうするか。お尋ね者になり、警察から追われている彼としてはかつての犯罪者仲間にすがるしかなかった。この犯罪者組織が「鉄の輪」である。

そこのボスから新しい犯罪に加担するよう命令される。自分の息子を人質に取られている以上従うしかない。盗みに入った家で彼は驚くべき人物に出会う。最終的に明かされる真実は更に驚愕的なものであった。

正直終わり方はあまりに作り話過ぎて、まさに作り話だからなのであるが、このような設定が現在でも許されるかと思ってしまうくらいである。

 
原作者のアルフレッド・マシャールはフランスの小説家。大正11年に『鎖の環』という邦訳名で水谷準が訳して博文館から出版されている。