2015年7月2日木曜日

イプセン『野鴨』 1884

豪商の家で会食が開かれる。戻ってきた息子は父親に批判的である。これは父の過去の「罪悪」を知っているからだ。彼の友人、写真家はその過去の罪悪の犠牲である、豪商の元同僚の息子である。写真家は昔の事情を良く知らない。未だ豪商の世話になっている父を恥じている。しかし更に彼が知らない秘密があった。

豪商の息子は正義漢だが、あまりに自分にとってあるべき姿の実現のため周囲に及ぼす影響について無頓着である。父と衝突した彼は、友人の写真家の家に居候に行く。写真家は妻と娘がいる。写真家の父は変わり者で、軍人に戻る夢を追っている。家で野鴨その他を飼っている。この野鴨は以前負傷したのを介抱して、今は特に娘が世話している。

豪商の息子は友人の写真家に真実を告げることを義務と心得、写真家の妻と豪商の過去を話す。衝撃を受けた写真家は家族が信じられなくなり、家を出ると言い出す。しかし一層の悲劇が待っていた。

イプセンお得意の過去の因果が子に報いという家庭内悲劇であり、悲劇の衝撃さでは特に印象が深い。
山室静訳、河出書房版世界文学全集第22巻、昭和44

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