2017年7月2日日曜日

クイーン『Yの悲劇』創元推理文庫、鮎川信夫訳 昭和34年



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エラリー・クイーンの古典的推理小説を何十年ぶりに読み直した。原作は1932年に発表。
ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』を思わせる枠組み、雰囲気。閉ざされた古い屋敷を舞台に、かなり異常と言われる一家で事件が起こる。
古典的、とは古い、と言い直してもいい。古いという形容詞は褒め言葉と思われていない。けなしていると思われるかもしれないが、自分にとって古い、という点がこの作品の魅力である。古い作品の魅力の一つは構成が単純である。クイーンの国名シリーズなど読者をけむに巻く、が目的となっているように思えて感心しなかった。

ともかく「本格」推理小説ほど子供だましの文学はないであろう。一応理屈として考えられるが必然となり、犯人はヘマもせずみんな超名優である。
それをトリックや犯人の意外性を基準にして、あれこれ論じられる大人がいるらしい。幸せな人々である。
ホームズ物が読まれているのは推理小説の基準からではない。ホームズやワトソンが面白く、後期ヴィクトリア朝のイギリスの雰囲気が楽しめるからだろう。

十代前半に読んだ経験が懐かしく読み直したのだが、後半で犯罪の筋書きが発見される。そこを読むと犯人がすぐわかってしまう。ちょっと驚いた。
 
この作品が以前とりわけ(しかも日本で)評判が高かったのは、この創元推理文庫版の解説を書いている、中島河太郎という評論家が持ち上げていたせいではないか。当時非常に有名な推理小説評論家で、恐ろしく偏った意見、というか自分の好みで作品を裁断していた。子供心にもそれは良く分かった。

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