2017年9月9日土曜日

終の信託 平成24年



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周防正行監督、フジテレビ=東宝=アルタミラピクチャーズ、草刈民代主演。
尊厳死を検討しようとした映画。主人公の女医が検察庁へ呼ばれる場面から始まる。患者を故意に死なせたとして殺人の容疑がかかっている。検事は長時間女医を待合室で待たせる。その間、回想で以前の場面になる。役所広司演じる患者は喘息を何十年も病み、悪化し回復の見込みがない。経済的な理由でも家への医療費負担も気になる。

主治医の女医と患者は色々語り合う。主治医と患者の間には、信頼関係がなくてはならない。主治医は患者の健康を、完全に「仕切っている」つもりでいるものである。しかしこの映画の医者と患者の関係はおかし過ぎる。あまりにも私的にベタベタしているのである。
例えば看護婦が患者の身体を拭くとき、女医は自分にやらせてくれと言う。あんなこと実際の医師は絶対にやらない。医者は専門知識を総動員して患者の治療に当たるのが使命であり、看護婦に代わって誰にでもできることをして親切だとか、あまりにも医療の実際を知らない製作者の見当違いも甚だしい。

女医は自分が失恋で死にたい気になったから、患者の気持ちもわかるなど、論理の飛躍がひどすぎる。検事も言ったように、いくら事前に延命治療は嫌だと言っていてもその際になったら何としても生きたいと思うのが人間(の本能)であり、それは醜態でもなんでもない。この映画は自殺幇助も場合によっては罪でないとの主張にも見える。
どう素人目に見てもこの女医の行為は弁護のしようがない。こんな医者がいたら困る。

ところが後半で検事が女医の行為を非難する場面になる。それを見ると今度は女医に同情したくなる。
相手は医者であり、女性であり(これを言ったら差別になる?)、論理的に答えているのである。それを暴力的に非難、恫喝・威嚇して脅す。やくざじゃあるまいし。脅しによって、白状させるという狙いに効果があったように見えない。
いかにも検察=権力者のイメージに合っているが、映画はしばしば観客の思い込み、先入観、偏見に迎合した、付け入る描き方をする。容疑者がふてぶてしい悪党なら、脅しに効果あるかもしれないし、気持ちもわかるが。
もし偏見でなく描き方が間違いでなく、検事がみんなああいうものだったら本当に直してほしいと思う。

感想としては、エキセントリックな女医と暴力的過ぎる検事を描いた映画、となろうか。

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