2016年12月12日月曜日

長谷川三千子『民主主義とは何なのか』文春新書 平成13年



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著者は哲学専門の大学教授。現代では無条件に肯定されている民主主義という概念について言葉の思想的歴史的検討を進めている。
田歓一の『近代民主主義とその展望』にはデモクラシーという言葉は20世紀初頭までは、いかがわしいと思われていたとある。この由来を探る。
まず政治の始まりである古代ギリシャ、次いでフランス革命期での民衆の行動の危険さ。更に主権の意味合いにしても、かつては神という至高の存在がいた。またイギリスでは伝統、慣習によって正当性が保たれた憲法。それが人民(国民)主権となると、フランスではルソーの一般意思が基礎とされた。一般意思を体現したとする多数派による少数派の弾圧を引き起こす。

主権が国家最高の権力である。これをイギリス革命の中で正当化したホッブスは、生存のため各個人の権利放棄を要求した。それに対しロックはご都合主義による論理展開をした。これがアメリカの独立宣言やフランスの人権宣言の元となった。
このように民主主義や国民主権は由来からして神聖不可侵な概念ではない。それらは逃走的な概念であり、相手方を倒すことに利用される。
理性による冷静な討論こそ望まれる。
 
著者の言い分は最後の方にある。それに賛成するか反対するかはさておき、誰も疑問を挟まない概念について根本から再検討しているのは評価すべきである。

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