『ニルスの不思議な旅』で有名なスウェーデンの女流作家セルマ・ラーゲルレーヴの小説。
大晦日、救世軍の若い女兵士は、病院で死を迎えようとしている。彼女はかつて世話をした男ホルムを呼んでくれるよう周囲に頼む。
そのホルムは飲んだくれで破滅的な人生を送ってきた。以前彼女の世話もないがしろにし、あまつさえ彼女に病気を移した。そのため健康を害し、今や危篤状態に至っているのである。彼女はホルムを愛していたのだ。
ホルムはその頃、仲間と飲んでいる。仲間から話を聞く。新年を迎えようとする夜中に死ぬと、死神が御者の馬車がやって来て死んだ者を御者に取り立てる。その後一年間は死神と共に御者にならなければならない。
ホルムは死ぬ。御者になって女兵士の元に行く。
彼は妻と子に対しても冷酷な家長でしかなかった。
また昔の話としてホルムの弟の挿話も語られる。彼も兄と同様お尋ね者であったが、刑務所を脱走した際、親切な家に匿ってもらった。得にその家の少年にいたく愛情を抱くようになる。この話を弟の臨終の際にホルムは聞いていた。
女兵士も死ぬ。改心した彼はなんとかして妻や子に会いたい。しかし彼はもう死んでいるのである。ここで奇跡が起こる。
石丸静雄訳、角川文庫、昭和34年
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