イングマール・ベルイマン監督、瑞、96分、白黒映画。
姉と妹、妹の息子が故郷に帰る途中、姉の調子が悪くなる。途中の駅で降りる。言葉の通じない異国の街である。戦車が多くある。2023年1月31日火曜日
沈黙 Tystnaden 1963
2023年1月30日月曜日
鏡の中にある如く Sasom I en spegel 1961
イングマール・ベルイマン監督、瑞、89分、白黒映画。
海辺の別荘、小説家の父親、医者と結婚している娘、その十代の弟がいる。娘は精神の病気にかかっていた。その病気で命が危ないと父親と夫は舟の上で話す。娘は夜眠れなくて父親の部屋に行く。小説の推敲をしていた。父親は呼ばれて出ていく。その間、娘は机から父の日記を取り出し読む。そこには自分が間もなく死ぬ、でも小説家としてそれを観察できるという記載があった。
これで娘の精神が参る。夫の医者は心配するが、父の日記を読んだ、内容は父に直接聞いてくれと娘は答えた。また舟の上で二人きりの時、医者は義理の父親に聞く。(妻)娘が日記を読んだそうだが、何が書いてあったかと。父親は話す。義理の息子の医者は激しく批判する。雨が降る中、娘は弟と廃船の中で抱き合った。悪魔がうつったのか。後、娘は精神の状態が悪化し、神が来ると言い出すが夫の医者は否定する。入院用のヘリコプターが来て娘は運ばれていった。弟は父親と話し、話合いが出来て喜ぶ。
2023年1月29日日曜日
ブルジョワジーの密かな愉しみ Le Charme discret de la bourgeoisie 1972
ルイス・ブニュエル監督、仏、102分。
駐仏の某国大使とブルジョワの数人は麻薬の輸入をしていた。仲間の家に食事に招待されていたので妻同伴で行くと、相手は日を間違えていると言う。2023年1月28日土曜日
佐々木毅『宗教と権力の政治』講談社 2003
中世のキリスト教のヨーロッパ信仰共同体の仕組み、その思想の説明が大半を占める。最大の論者トマス・アクィナスの思想が解説される。実際の教会の現実、体制が次第に崩れていく。
それに対し宗教改革が起こる。ルターとカルヴァンの違い。欧州の教会体制、キリスト教中心の社会が変化し崩壊していく。
そこに現れたマキャベリは、権力を中核に据えた議論をし、それまでの社会、共同体構成員の理想を目的とする政治観を転回させた。更に世俗権力の新興を基に主権という概念が出てくる。
いずれも世俗国家が宗教を軸にして争っていた時代からの脱却をし、新たな社会での政治原理を求める思想であった。
2023年1月27日金曜日
敵は本能寺にあり 昭和35年
大曽根辰夫監督、松竹、98分、総天然色映画、松本幸四郎(当時)主演。
織田信長の臣下明智光秀は、敵と和睦し相手方の将を人質にとる。その代わり自分の母親を相手方に差し出した。命を保証した筈なのに、人質にとった敵方の将を信長は殺してしまう。これで母親も相手方に殺された。2023年1月26日木曜日
小間使いの日記 Le Journal d’une femme de chambre 1964
ルイス・ブニュエル監督、仏伊、97分、白黒映画、ジャンヌ・モロー主演。
戦前の話、パリから田舎の館にジャンヌ・モローが小間使いとしてやって来る。笹沢左保『死人狩り』 昭和40年
刑事物の犯罪小説。西伊豆の海岸沿いに下田から沼津まで行く定期バスがある。そのバスの運転手が狙撃され、バスは転落し海に落ちて乗務員乗客併せて27人全員が死亡した。事故でない。運転手が撃たれていたのである。殺人事件として捜査される。担当の刑事が主人公でそのバスに自分の妻と子供二人が乗っていて一遍に家族を失った。相棒と二人で被害者を洗っていく。誰か一人を殺すため乗客全員を道連れにしたのである。
被害者たちを探っていくといずれも訳ありというか、事情があった。百万円の大金を懐中にしていた若い男や女に狂って家を放り出した中年男や、宿で乱痴気騒ぎをしていたらしいドラ息子とドラ娘、横暴な父親が死んだので財産を兄弟で分けて事業をやっていこうという者たちなど。問題な者がほとんどなのだが、今回の殺人に結び付かない。相棒の刑事が後ろから殴られ昏倒した。その背中に靴ベラが落ちていた。主人公は犯人の靴ベラが背中に落ちるわけないし、わざと落としたのだろうと推理する。男と見せかけるためではないか。自分が捕まえ死刑になった男の妻がレストランをしている。一度は主人公に色仕掛けを試みた。容易に分かるようにこの女が犯人である。主人公の刑事の過去の逮捕が原因だったのである。
昭和40年に『乗っていたのは27人』という題で連続テレビ映画として放送された。そのなつかしさで読んだ。(祥伝社文庫、2019)
悪魔の美しさ La beaute du diable 1950
ルネ・クレール監督、仏、96分、白黒映画。
ゲーテの『ファウスト』第一部を基にして脚色した映画。ファウスト博士のところへ悪魔メフィストフェレスが来る。メフィストを最初はジェラール・フィリップが演じる。若返ったファウストはそのフィリップがやる。2023年1月25日水曜日
サラトガ本線 Saratoga trunk 1945
サム・ウッド監督、米、135分、白黒、イングリッド・バーグマン、ゲイリー・クーパー。
19世紀末、バーグマンは召使いを連れてパリから故郷のニューオーリンズに戻ってくる。廃墟となった自分の家を建て直し、親戚に母の復讐をするためだった。それにはお金持ちと結婚する必要がある。2023年1月24日火曜日
東京スパイ大作戦 Blood on the Sun 1945
フランク・ロイド監督、米、1945、白黒映画、ジェームズ・キャグニー主演。
1945年の早い時期に公表された、つまりまだ大戦中の映画である。2023年1月23日月曜日
ザ・メッセージ I still see you 2018
スコット・スピアー監督、米、98分、空想科学恐怖映画。
主人公の高校生がまだ幼い娘だった頃、研究所の原爆なみの大爆破があり、多くの人々が亡くなった。それでも今でもそれら亡くなった人の一部の幽霊、幻が出てくる。主人公の父親も食卓に現れる。主人公はその幽霊、残存者と呼ばれる者の一人が良く現れて、メッセージを残す。逃げろと。主人公はクラスの友人の男とその謎を探ろうとする。爆心地の研究所跡に行く。多くの残存者がいた。しかもそれらの一部によって主人公は危機に陥る。しかし助けてくれたのは父の残存者だった。これでもう父の残存者を見ることはなくなった。バッド・ウェイヴ Once upon time in Venice 2017
マーク・カレン監督、米、94分、ブルース・ウィリス主演。
舞台はロサンゼルスのヴェニス。そこでウィリスは私立探偵をやっている。佐々木毅『よみがえる古代思想』講談社 2003
本書は政治思想史のうちギリシャ・ローマ時代を扱う。講演を基にした口調なので読みやすい。
思想史によっては個人単位でみると、ここの部分ではプラトンとアリストテレスしか出てこないものがある。本書はそうでなく、そもそも古代のギリシャでなぜ哲学が始まり、政治思想の原型のようなものが出てきたかを解説する。ソクラテスやプラトン、アリストテレスのような有名な人物は当然詳しく説明される。
また古代ギリシャだけでなく、後のローマに続くヘレニズム時代、そしてローマ時代。このような社会になってなぜギリシャの政治思想がそのまま通じなくなったか、その社会の変化を解説する。それからローマ時代の思想潮流、ストア派、キニック派などを説明した後、キケロ、セネカ等の個別思想家へと説明は移る。
政治思想史でとりわけ重要な古典古代をこれほど分かりやすく説明しているものは少ない。真に理解している者はやさしく説明できるというが、その典型と言える。
オーソン・ウェルズのオセロ Othello 1951
オーソン・ウェルズ監督、主演、92分、米、白黒映画。
シェイクスピアの劇の映画化、白黒の映像が美しい。映画の冒頭はオセロとデスデモーナの葬列が城壁の上を通っていく場面である。これは映画の最後でも繰り返される。2023年1月22日日曜日
渡辺努『世界インフレの謎』講談社現代新書 2022
現在世界的にインフレが高まって来ている。特に欧米はひどい。この原因は何か。すぐに思いつくウクライナ紛争ではない。ロシヤのウクライナ侵攻以前からインフレは高まってきた。原因は新型肺炎の流行によるところが大きい。
労働力は減少し、また職場に戻らなくなっている。世界の生産の分業体制が崩れ、自国に回帰していきている。これらは供給を減少させた。また消費もサービス需要は減退し、物の需要が高まった。サービスの需要は減退しても価格の硬直性が大きいので価格が低下しない。物の需要が高まり物価を押し上げた。
日本の特殊性として21世紀以降、物価も賃金も硬直で動かない。企業は値上げをすると他企業に市場を取られる恐れがあるからだ。物価が落ちついているので賃上げがなくても何とかやっていける。この状態を打破するための条件が最近の輸入物価上昇で出てきているかもしれない。
2023年1月19日木曜日
喜多川泰『手紙屋』 2012
書簡型式で就職活動をしている大学生と助言を与える「手紙屋」とのやり取りが主の小説である。手紙屋とは十通の手紙を、申込者とやり取りしていてそれを職業にしている。主人公の大学生は手紙屋との文通で就職、仕事、ひいては人生についての考え方を啓蒙されていく。
いわゆる自己啓発本の類である。その手をあまり読んでいないが、多くと似たような助言であろう。ともかく想定する読者が大学生くらいのようで、かなりの歳で読書を趣味としている者から見ると当然する内容、また主人公があまりにも単純で非現実的に見えてくる。
ただ売れているのでこのような本に対する需要があるのだろう。(ディスカバー・トウェンティワン社)
2023年1月17日火曜日
血とダイヤモンド 昭和39年
福田純監督、東宝、96分、白黒映画。
数億のダイヤの原石が神戸の税関から運び出された時、悪漢どもから銃撃を受け奪い去られる。その際悪漢の首領格の佐藤允が撃たれ負傷する。倉庫のようなところに逃げ込む。隠密七生記 昭和33年
松田定次監督、東映、85分、総天然色映画。
尾張藩の名古屋城の天守閣の屋根で、東千代之介と中村錦之助が見張りをしている。次期将軍の座に就く者が書いてある遺書が鯱に隠してあった。東のいないうちに中村はそれを取り出し逃げる。中村は幕府の隠密でこの文書を盗みに尾張藩に潜入していたのだ。後から親友と思っていた東は事情を聞き驚愕し、取り返しに中村を追う。東の妹は中村を慕っており、自分も単独で中村を追う。2023年1月16日月曜日
エヴァの匂い Eva 1962
ジョゼフ・ロージー監督、仏伊、112分、白黒映画、ジャンヌ・モロー主演。
ジャンヌ・モロー演じるエヴァは高級娼婦で男を破滅させる魔性の女である。人気作家はヴェネツィアでエヴァに会う。すっかり虜になる。いかにしてエヴァの機嫌を取るか、そればかり考えるようになる。新婚の妻がいるのにそっちのけでエヴァに入れ込む。とうとう妻が夫とエヴァの関係を知り、自殺する。後にエヴァと再会した小説家はまだエヴァに未練があるが、エヴァの方は全く関心がないようである。2023年1月15日日曜日
TENET テネット Tenet 2020
クリストファー・ノーラン監督、米英、151分。
空想科学・活劇映画である。主人公のCIA工作員が、第三次世界大戦を阻止するための組織TENETから本人も知らぬ間に試験させられていて合格し、その一員となる。未来から来る逆行する兵器がある。それを知るロシヤ人との闘いになる。そのロシヤ人の妻で良人を憎んでいる女と協力し、ロシヤ人と戦う。シラー『ドン・カルロス』 Don Karlos, infant von Spanien 1787
スペインの王子、ドン・カルロスが主人公の五幕の戯曲。主人公以外の主要な登場人物はドン・カルロスの親友であるポーザ侯爵(ドロリーゴ)、義母エリザベト、父親であるスペイン王のフェリペ二世、エボリ公女などである。
義母のエリザベトとはかつて婚約者の仲であったのに、父親のフェリペ二世が妻にした。もう母と子の関係になってしまったが、お互い内心では相思の仲である。フェリペ二世は臣下たちが信用できない。そればかりでなく、息子と妻が愛情関係にあるのではないかと悩む。エボリ公女はカルロスを愛しており、初めは自分が愛されているのではと誤解していた。カルロスとエリザベトの仲を知り、王フェリペ二世に告げ口をする。
本戯曲でカルロスと並んで重要な人物はポーザ侯爵である。当時スペインの殖民地であったフランドルの独立運動に共鳴している。カルロスとは親友であり、幼い時かばってもらった経験もある。それでなんとかしてカルロスのためになりたいと願っている。カルロスと義母の仲を知り、フェリペ二世から守りたいと思い、またフランドルの独立のために画策する。ポーザの理想と友情のための犠牲的行動は本戯曲の中でとりわけ心に残る。
ヴェルディが本戯曲を基にした傑作歌劇『ドン・カルロ』を作曲していて、正直、シラーの原作より有名である。ただ異同があり、歌劇は恋愛中心の話になっているが、原作の戯曲はもっと理想主義的であり、まさにシラーの面目躍如である。(岩波文庫、佐藤通次訳、1955年改訳)
2023年1月11日水曜日
松本清張『馬を売る女』 昭和52年
清張には売り買いする女を描いた短篇がある。買う方は『地方紙を買う女』であり、魅力的な題名である。地方紙をある時期から購読し始めた女。そのうち購読を止める。なぜ特定期間だけ地方紙を読んでいたのか。この謎は少し読み始めると大体見当がつく。
売る方が収録されている『馬を売る女』である。短篇としてはやや長い方である。馬を売るとは競馬の情報を売るのである。気づく人はいよう。この競馬情報の売り方がいかにも小説的と思ったが、その仕組み、からくりは実際にあったらしい。それを知って驚いた。また高速道路の駐車地帯が小説の仕掛けの一つになる。車を駐車地帯に停めて何をやっているか、これも想像できると思うが登場人物は分からないと言っているのである。かまととぶっているのかと思いたくなる。
清張の小説に出てくる女の主要登場人物はたいてい不幸である。『波の塔』の頼子のように美人薄命もあるが、本編は主人公が女であり、しかも全く地味な女なのである。30を過ぎて全く結婚の望みは捨てている。今なら考えられないが、女の価値はクリスマスケーキという言葉があった時代である。女性差別と糾弾される前に、今では実態の変化で死語である。美人よりもそうでない方が小説としては書きやすい。この女主人公もよく書かれている、記憶に残ると思う人が多いだろう。
清張の小説にはご都合主義が目立つが(大体、小説なんてものは私小説以外はそうである)、これは短篇ということもありそれほどでない。後半は推理小説風になっていて意外なところから犯罪が発覚するというのは全く清張的。推理小説はこさえ物の極致であり、理屈が通っていれば現実可能性など全く無視していいらしい。この小説は前半では女主人公の人間性に関心があり、後半になると推理小説という通俗的展開で、つぎはぎとも言えるし、面白いとも言える。
2023年1月8日日曜日
歌麿をめぐる五人の女 昭和34年
木村恵吾監督、大映、99分、総天然色映画、長谷川一夫主演。
同名の映画は溝口健二が田中絹代を主演にして昭和21年に作成されているが、こちらは34年製作の総天然色映画である。浮世絵師歌麿を長谷川一夫が演じる。