刑事物の犯罪小説。西伊豆の海岸沿いに下田から沼津まで行く定期バスがある。そのバスの運転手が狙撃され、バスは転落し海に落ちて乗務員乗客併せて27人全員が死亡した。事故でない。運転手が撃たれていたのである。殺人事件として捜査される。担当の刑事が主人公でそのバスに自分の妻と子供二人が乗っていて一遍に家族を失った。相棒と二人で被害者を洗っていく。誰か一人を殺すため乗客全員を道連れにしたのである。
被害者たちを探っていくといずれも訳ありというか、事情があった。百万円の大金を懐中にしていた若い男や女に狂って家を放り出した中年男や、宿で乱痴気騒ぎをしていたらしいドラ息子とドラ娘、横暴な父親が死んだので財産を兄弟で分けて事業をやっていこうという者たちなど。問題な者がほとんどなのだが、今回の殺人に結び付かない。相棒の刑事が後ろから殴られ昏倒した。その背中に靴ベラが落ちていた。主人公は犯人の靴ベラが背中に落ちるわけないし、わざと落としたのだろうと推理する。男と見せかけるためではないか。自分が捕まえ死刑になった男の妻がレストランをしている。一度は主人公に色仕掛けを試みた。容易に分かるようにこの女が犯人である。主人公の刑事の過去の逮捕が原因だったのである。
昭和40年に『乗っていたのは27人』という題で連続テレビ映画として放送された。そのなつかしさで読んだ。(祥伝社文庫、2019)
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