スペインの王子、ドン・カルロスが主人公の五幕の戯曲。主人公以外の主要な登場人物はドン・カルロスの親友であるポーザ侯爵(ドロリーゴ)、義母エリザベト、父親であるスペイン王のフェリペ二世、エボリ公女などである。
義母のエリザベトとはかつて婚約者の仲であったのに、父親のフェリペ二世が妻にした。もう母と子の関係になってしまったが、お互い内心では相思の仲である。フェリペ二世は臣下たちが信用できない。そればかりでなく、息子と妻が愛情関係にあるのではないかと悩む。エボリ公女はカルロスを愛しており、初めは自分が愛されているのではと誤解していた。カルロスとエリザベトの仲を知り、王フェリペ二世に告げ口をする。
本戯曲でカルロスと並んで重要な人物はポーザ侯爵である。当時スペインの殖民地であったフランドルの独立運動に共鳴している。カルロスとは親友であり、幼い時かばってもらった経験もある。それでなんとかしてカルロスのためになりたいと願っている。カルロスと義母の仲を知り、フェリペ二世から守りたいと思い、またフランドルの独立のために画策する。ポーザの理想と友情のための犠牲的行動は本戯曲の中でとりわけ心に残る。
ヴェルディが本戯曲を基にした傑作歌劇『ドン・カルロ』を作曲していて、正直、シラーの原作より有名である。ただ異同があり、歌劇は恋愛中心の話になっているが、原作の戯曲はもっと理想主義的であり、まさにシラーの面目躍如である。(岩波文庫、佐藤通次訳、1955年改訳)
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