2026年7月26日日曜日

渡辺努『インフレの時代』中公新書 2026

日本経済は長い間、前世紀末からデフレの時代を経験してきた。それがようやくインフレの時代に変わろうとしている。どういう特徴があるのか、日本経済にどう影響を与えるのかを考察している。今後、インフレが続けば日本経済を正常化するために、特に賃金の引上げが必要であると強調している。これが政府として後押しすべき政策だと言っている。

また政府の負債がインフレによって目減りし、政府はインフレによる最大の利得者となるので、その利得を使って必要な支出をできると述べる。更に日銀の総裁がどのように金融政策を進めてきたか、今度の植田総裁の政策に対する姿勢はどうかも分析する。また物価統計の改善の必要性を具体的事例で述べ、日本と米国では指標としている消費者物価指数が異なる(日本では見た価格、米では実際に支出した価格)ので、調整が必要と言っている。

世界大戦争 昭和36年

松林宗恵監督、東宝、110分。世界が核戦争に突入し、破滅する様を描く。フランキー堺が主人j公で運転手をしている。娘に星由里子がいて、船員の宝田明と恋仲であり、婚約する。その間にも大国間(連邦とか同盟といった言葉を使っている)では一発触発で、いつ核戦争に突入するか分からない緊張が続いている。あわやというところで核ミサイルの発射が止められたという場面もある。

しかし最終的には戦争が始まり、東京は壊滅する。船にいて助かった宝田明その他も東京に帰ろうと言って映画は終わる。なおこの映画はキューバ危機の前年に製作されている。

機動捜査班 秘密会員章 昭和36年

小杉勇監督、日活、白黒映画。あるナイトクラブに暴漢どもが押し寄せ、店を叩き壊す。警察がやってくるが、支配人はたいしたことないと言って追い返す。来た刑事はバッジを拾う。ここを経営する組と張り合う組もクラブを経営しており、競争していた。警察は、クラブの中に秘密があるとにらんでいた。

客の一部がバッジを見せて奥へ入っていく。それで警察は拾ったバッジを見せて中に入ると賭博場になっていた。入った刑事の一人は殴られ意識を失った。警察隊が来てみると賭博場は跡形もなく消えていた。殴られた刑事が見つかったが、拳銃と警察手帳を奪われていた。後に刑事がクラブにそれらを取り返しに行くと、ボスがバッジと引き換えに銃と手帳を返すと言う。刑事は警察に戻り証拠品のバッジを取り出し、それの模造品を作ってクラブに行く。ボスは刑事に手帳等を返さない。警察なんかよりここで働かないかと誘う。クラブにいる女は、刑事が悪に染まっていくのを見るのが嫌で忠告する。

敵対するクラブを潰す。しかしこのクラブも警察の手が回っていた。車で逃げるボスと女、運転する刑事。車に追跡装置を付け、警察が追えるようにしていた。途中で車を捨て、刑事とボスは闘い、ボスを逮捕する。帰りのパトカーの中で、刑事がクラブに誘われたのは部長の指示によったと言う。主役の刑事の妹役で松原智恵子が新人として出ている。大した役ではないが、クレジットでは主役の次に名が挙がっている。

コナン・ドイル『ライオンのたてがみ』 The adventure of the lion’s mane 1926

「シャーロック・ホームズの事件簿」所収の後期の短篇。ホームズは引退し、海辺に住んでいる。ある日、友人と浜辺を歩いていると瀕死の男に出くわす。近くの学校の教師である。背中に鞭で打ったようなひどい怪我があり、ライオンのたてがみと言って息絶える。

この男と友人だったあまり人付き合いの良くない男が警察に容疑者とされる。ところがこの男も後に同様の被害に会う。今度は死ななかった。危害を加えたものはクラゲの一種と分かった。その形はライオンのたてがみに似ている。

2026年7月25日土曜日

コナン・ドイル『ソア橋』 The problem of Thor bridge 1922

「シャーロック・ホームズの事件簿」に収められている後期の短篇。アメリカの上院議員をしていたという金鉱王は傲慢な男である。その夫人の死体が見つかった。容疑者は若い女家庭教師である。夫人は南米の出身、子供たちの家庭教師として雇われた女は魅力的だった。その家庭教師と夫人が会う約束のソア橋で、夫人が死体となって発見された。容疑者は家庭教師しかいない。アリバイもない。

ホームズらは死体の発見されたソア橋に行って調べる。判明した事実は夫人が、夫を誘惑したとして若い女教師に嫉妬し、殺人に見せかけ自殺をしたのだった。殺人容疑が家庭教師にかかればいいという算段だった。

苫米地英人『スピリチュアリズム』にんげん出版 2007

スピリチュアリズムとは何か、どうして多くの人がはまるのか、それを知りたく、以前から関心があった。本書はスピリチュアリズムを批判的に論じた本である。そのからくりを解き明かそうとしている。

このテーマとなると、自らがそれを信じ、本人は人助けのつもりもあるのか、勧誘されているかのような気分になるものがある。この本に出てくる江原啓之という人の著書を絶賛している文を以前読んだ。そんないい本なのかと思って読み始めると、そのうち気分が悪くなって、というと言い過ぎか、ついていけなくなり投げ出した。世の中にはそういう本で感激する人がいるのである。ともかく精神の安定を求めている人が、それで目的を達成できればよいと言える。そういうと新興宗教とどこが違うか。組織や機構のない宗教か?しかしオウム真理教や人民寺院などはひどい例である。スピリチュアリズムはすべて、そういう方向へいくばかりではないだろう。中心人物がどういう者かによるのか。

2026年7月24日金曜日

中野京子『名画で読む「音楽の秘密」』祥伝社 令和7年

この本は、絵の中に音楽または音が鳴っていると思われるものや、楽器が見える絵画を集めている。多くの絵画があるが、有名なものはあまり多くない。ミレーの『晩鐘』とか、ホルバインの『大使たち』、マネの『テュイルリー公園の音楽会』、そしてフェルメールの『絵画芸術』などは誰でも既知であろう。それ以外では、こんな絵があったのかと思う作品が大部分である。

「はじめに」のところに、特定の絵画から霊感を得て作られた音楽はそれなりにあるのに、特定の音楽から描かれた絵画はほとんどないと書いてある。有名な音楽を絵画化しようとする意欲を画家が持っていないせいだろうとある。特定の音楽でなく、音楽が関係している絵画なら幾つもあるので、それを集め、解説している本である。