トーマス・マンの4歳上の兄、ハインリヒ・マンの代表作。
主人公ディーデリヒ・ヘスリングの半生を通じて、19世紀末のドイツ帝国を描く。
ディーデリヒの少年期の説明から始まる。青年期での友人や女性との付き合い、その女性も打算から振ってしまう。更に博士号を得て、父の工場の長となる。彼の野心は受け継いだ工場経営に留まらす、政治へと向かっていく。
主人公は権威主義、愛国主義、打算、保守主義の塊のような姿で描かれ、特に皇帝至上主義者である。政治の議論では常に、時の皇帝ヴィルヘルム二世への賞賛は留まるところを知らず、民主主義、社会主義への罵倒は口を極める。
このように描かれる帝政ドイツは将来のナチスの擡頭を考える上でも有効であろう。当時の社会の雰囲気が良くわかる。
もちろん小説としても面白いと言ってよい。
発表は第一次世界大戦後にならないと許可されなかったようであるが、執筆は1911~1915年と戦争初期にされている。
小栗浩訳筑摩書房版世界文学全集第45巻、昭和42年
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