2025年1月19日日曜日

小林一三『逸翁自叙伝』 1990

逸翁とは、阪急電鉄、宝塚(少女)歌劇、東宝などを創業した小林一三の雅号。近代の実業家の中でも大物の一人である。

明治の初期に山梨県に生まれた。ただこの自伝の他と異なる点は、生まれた場所や幼少期について何も語っていない。慶応義塾に入るところから始まる。慶応を出て三井銀行に入る。三井銀行時代の思い出が延々と続く。なおこの自伝は昭和27年に出されたもので、今から70年以上前である。その時点で大昔の事と言って書いているのだから、今からすると想像もつかない時代である。明治時代の銀行員生活の一例が分かる。銀行は大阪支店に配属された。戦前の大阪は経済の中心で、東京は政治都市だけだった時代である。東京一極集中は戦後の話。上司や同僚などを率直に評価しているが、著者を含め鬼籍に入っている人たちである。銀行家からの引きで証券業を始めようとしたら日露戦争後の不況期になってしまい、結局のところ鉄道業に携わる。後半の記述は鉄道史や関西在住者には興味があろう。(図書出版社)

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