2025年1月27日月曜日

宮部みゆき『火車』 平成4年

主人公は怪我で休職中の刑事である。身内の若い男から婚約者が失踪したので見つけてほしいとの依頼で捜し始める。女の過去は不明だった。以前勤めていた会社を訪ねても身元が分からない。刑事は捜していくうちに、失踪した女は自称して周囲が信じていた名前の持ち主でないと知る。しかもその名の実在の女はいた。その女はどうなったのか。また失踪した女の正体は何か、を探る。

結局のところ、失踪した女は親の住宅ローンが焦げ付き、親がサラ金を利用したためその債務に苦しんだだけでなく、娘まで暴力団の魔の手が伸びてきたので、自分の戸籍を抹消し、他人の女の戸籍を利用するため、その女を殺したというのが真相だった。それにしても殺す必要はあったかどうか。殺さず、何らかの方法で新たな戸籍を獲得する方法を考えるべきではなかったのか。それよりこの悲劇はサラ金業者の暴力団が、映画のターミネーター顔負けに徹底的に、債務者の子供まで悪魔の如く取りつくのが元々の原因である。サラ金問題は覚えているが、ここまでひどいことをサラ金側はできたのか。警察があてに出来なくとも容疑者は非常な美人という設定で、若い男が二人も結婚したいと思ったほどだから、しかも自分に罪はないのだから、協力してもらえなかったのか。親のせいでひどい目に会っている女が殺人をして本当の罪人になってしまい、それで幸せが手に入ると思ったのか。運よく結婚できてもいつ警察に自分の犯罪がばれるかと、残りの一生を心配しながら過ごすことになる。

ともかくサラ金問題は規制法が出来て過去の話となった。この小説で知識が増えたのは、大阪球場(こういう球場があったこと自体知らなかったが)が球場としての役割を終えたのち、グランドに住宅展示場を作っていたという事実で、今ではインターネットでその当時の写真を見れるから見て面白いと思った。(新潮文庫、平成24年改版)

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