ラドクリフの出世作で1791年に出された。『ユドルフォ城の怪奇』の3年前である。
簡単なあらすじは以下の通り。17世紀、パリからラ・モット夫妻は夜逃げする。途中の宿で拘禁されていた少女アドリーヌを助ける。アドリーヌは実父からひどい仕打ちを受けていた模様。一行は森の中で見捨てられた館を見つけそこに住む。ラ・モットの息子ルイが来る。アドリーヌに気があるようである。後にこの館の所有者であるモンタルト侯爵が現れる。侯爵はいい歳だがアドリーヌを見染める。侯爵の部下であるテオドールとはアドリーヌは相思の仲になる。しかし侯爵はラ・モット夫妻にアドリーヌを我が物にせんとする手助けを要請する。館を提供されている夫妻は抵抗しにくい。アドリーヌは従者ピーターの手引きでその故郷サヴォワに逃げる。そこで神父ラ・ルック師の保護を受ける。テオドールは侯爵からアドリーヌを守るため、公然と反抗していたので窮地に陥る。最後の方は刻一刻と迫るテオドールの破滅に、アドリーヌ一派は救助できるか、といった映画的手法による展開である。
まず『ユドルフォ城の怪奇』に比べ、短いので読みやすい。少女が主人公であるのはユドルフォ城と同じ。ゴシック小説の一つであろうが、題名とおりロマンスといった感じの作品である。(三馬志伸訳、作品社、2023)
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