小説家の山田風太郎が医学生だった昭和20年一年間の日記。
よく戦時下でこれだけ記録できたものだと、また戦後の混乱期も同様に書けたものだと感心する。特に戦争が終結した時の筆者も含めた当時の周りの人々の反応が興味深かった。負けるくらいなら、日本人が全員死んでも抵抗すべきだと。今までの、犠牲になった兵士らは全く浮かばれないではないか。だから敗戦などという屈辱的な選択肢は拒否すべきだと。もしそういった選択をしていたら、日本は完全に近い形で滅んでいただろう。現在の日本人はほとんど生まれていなかったはずである。戦争を何年もやってきたから、そういう気持ちになったのは、想像できないわけでない。どれほどの当時の人々が同様に感じたか、統計もないから分からない。
昔読んだ『よみがえる日本』という中央公論の日本の歴史の本では著者の蠟山政道が、戦争をやってきたのだから負けたのは悔しいが、国民は戦争が終わってほっとした気分になったのではないか、といった趣旨の記述があったと覚えている。ほっとしたのではなく、ここの記述では切歯扼腕してありえない選択だと怒り狂ったとある。
0 件のコメント:
コメントを投稿