初めの題は『縁外縁』だった。大正五年に標記の題に変えた。
上州下州の境の山中、露伴は歩いているうちに日が暮れる。一軒家を見つける。問うと若い美人が出てきた。泊まらせてもらえないか、初めは断られたが、後に承諾する。こんな山の一軒家で稀な美人が一人住まいである。当然疑問が湧いてくる。布団を出してもらうと豪華な代物である。ますます露伴は驚く。それに寝ていると女はいつまでも起きているらしい。これは女の布団を自分が使っていると分かり、起きて女に布団を使ってくれと言う。女と露伴がお互いに布団を勧めあう。露伴は女の素性を尋ねる。
女は元は両親と暮らしていた。しかし父親が死に、後に母親も亡くなる。女はこの世に未練がなく、早く親の元に行きたいと思うようになる。女は非常に美人であったため、見染められた。華族の息子で将来が嘱望されている男である。しかし女は嫁に行く気はないと断る。ついに相手の男は恋煩いで病に伏せる。その家の使いが来て若様が危篤だから来てくれと頼まれる。女は行くが男は死んだ。女は家を出てこんな田舎に来た。明くる朝、露伴が起きてみると泊まった家などなく、髑髏が地面にあるばかりである。露伴が村に出て聞いてみると以前、癩病の女がこの地に来たと分かった。(新日本古典文学全集明治編第22巻、岩波書店、2002年)
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