2024年12月5日木曜日

河村小百合『日本銀行 我が国に迫る危機』講談社現代新書 2023

著者は日本銀行に数年勤め、その後日本総合研究所に移った。黒田日銀体制による異次元金融緩和政策によって日銀や日本政府がどのような状態になっているかの分析である。

黒田日銀体制は物価増加率を2%に上げるべく、9年間、異次元金融政策を続けた。その結果はどうであったか。2%の目標は達成できなかった。ただ黒田前総裁等、担当者は日本経済は回復した、日銀の政策は正しかったと自画自賛のようである。ここでは達成できたかどうかの議論ではなく、異次元政策を長期に渡って続けた結果、日銀の資産負債状態はどうなったかに関心がある。発行される国債のほとんどを日銀が購入し、負債側では当座預金が圧倒的に多くなっている。かつて国債は負債の日銀券と同じ規模にするという決まりがあったが、現在では日銀券の4、5倍の国債を抱えている。

黒田前総裁は、出口戦略を問われても常に時期尚早と言うだけで具体的な回答はなかった。それは出口戦略はできないから、つまり予定通りに物価が上がり、金利が上がれば国債価格は暴落し、債務超過になる。その赤字は政府が補填補填する。各国中央銀行は一時的に異次元政策をとっても出口戦略を考えて対応してきた。それなのに日銀は全く頬かむりで知らん顔してきた。これを許してきたわが国のマス・メディアやエコノミスト(学者を含む)はどういうつもりだったのだろうか。

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