バルザックの後期の長篇小説。美青年リュシアンに恋する娼婦のエステル、リュシアンを後援する悪党のヴォートラン、その他の人物がいれ乱れ、前々の作品から登場するヴォートランがどうなったか語られる。
社交界で話題の美青年リュシアンと高級娼婦エステルは相思の仲である。リュシアンを高い地位につけるため貴族令嬢の結婚が必要だが、それには巨額の金がいる。リュシアンを後援する悪人のヴォートランは本小説ではスペインの司祭エレーラと名乗っている。エステルに入れ揚げているユダヤ人の銀行家ニュシンゲン男爵を手玉にとり、エステルの下女をしている身内の女を通じて巨額の金を巻き上げる。
しかしエステルは自殺する。これを毒殺と見なした警察によってヴォートラン、リュシアンともに逮捕される。小説の後半は、ヴォートランが官憲といかに戦うかの展開となる。
ヴォートランは天才的な悪人で、官憲と渡り合う能力がある。しかし世間知らずのリュシアンは自分の余計な自白で、ヴォートラン共々窮地に陥らせたと悩み、監獄内で縊死する。ヴォートランは頭を働かせ、役人どもと丁々発止の戦いをし、掣肘を加えようとする貴族の夫人や役人の権力抗争の間を泳ぎ抜け、処刑どころか最後は出世までする。
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