チェコスロヴァキア生まれの劇作家トム・ストッパードの戯曲。19世紀ロシヤの進歩思想家、ゲルツェンとバクーニンを中心として、当時のロシヤの知識人たちがいかに社会の革新や改良を模索したかの群像劇である。実際の人物を描いているわけだから、創作は当然あるが、大きな流れは事実に基づく。ゲルツェンの自伝『過去と思索』は多いに利用されたようである。
進歩派といっても貴族、上流階級の者たちである。ロシヤの体制に縛られ、祖国に自由がなければヨーロッパへ行ける。夢見ていたパリを初め、ヨーロッパの現実も理想とは程遠い。各国へ移動しながら議論を戦わすロシヤの知識人たち。
極めて長尺の劇であり、上記の二人以外にも、当時の進歩派知識人が数多く登場する。進歩派内部の議論なので、ドストエフスキーのような保守反動は登場しない。それにしても21世紀、ソ連が過去となってからの創作である。もし70年代以前のようにソ連が「健在」だった時期に書かれたらどう描かれていたのか。その当時に書かれていないので無意味な疑問だが。
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