2017年11月19日日曜日

アラン『幻の怪盗』世界名作探偵文庫、ポプラ社、昭和30年、南洋一郎文



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怪盗ファントマの物語である。ファントマは無声映画時代から映画化されていて、映画の方で有名かもしれない。原作者はMarcel Alliain、フランス人である。ファントマ物はスーヴェストルとの共作で発表していたが、スーヴェストル死後はアラン単独で引き継いだ。
ファントマは変装の名人である。何しろ本書の登場人物の多くがファントマの変装だったという、怪人二十面相も顔負けの設定である。更に同じフランスの怪盗ルパンとの大きな違いは大変な殺人鬼で、しかも残虐な殺し方をする。

侯爵未亡人が殺される。嫌疑は同居していた青年と外国帰りの父親にかかる。二人とも逃げ出したからだ。その父親というのは実は偽物だったらしい。警察の大物ジューブ刑事はその青年シャルルを助け、以降二人で探偵をする。
駐仏英国大使が失踪し、箱詰め死体で発見される。かつての部下ガンの仕業らしい。そのガンは逮捕され死刑になる。しかし知らぬうちに別人(俳優)に入れ替わり、その俳優を死刑にしてしまった。

ある医学博士宅に強盗が押し入ると、刑事に手紙が来る。刑事は青年とその博士宅に忍び込む。カーテン裏で待つ。博士が来る。気がつかないようす。このあたり、ホームズの『恐喝王ミルヴァートン』を思い出してしまう。何もない様子だったが、彼らが去って後、女の死体がその部屋で発見される。検視に来る。博士は全く知らない女だと言う。しかもその女は身体が完全に骨まで押し潰されているという残虐な殺され方をしていた。顔さえわからなくしている。
刑事の味方となった女、今は入院中だが、身の危険が迫っている。厳重な警戒をする。しかし予告時刻に銃声がなる。刑事の機転で間一髪女は助かったものの、犯人を取り逃がしてしまう。

これまでの犯罪の手口で、真犯人はファントマと推測された。彼は様々な人物に変装していた。青年の偽親や英国大使の元部下のガンを初め、あの医学博士もそうらしい。
身体を押し潰す殺人方法は、大錦蛇を使って巻き殺したようだ。刑事は自分がおとりになってファントマを逮捕しようとする。
顔を潰された女は英国大使の妻だと思っていたが、実は別人。悪に手を染めた妻とファントマが一緒にいるらしい。刑事はその家に乗り込む。大爆発を起こす。しかしファントマも刑事も死体が見つからない。悪漢は失踪してしまったようだ、で終わる。

いかにも次作に続く、といった続篇を予定している終わり方。本文庫の諸話の中でも次々と殺人が起こり、残酷な殺され方という点では随一の作品ではなかろうか。

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