2017年11月4日土曜日

ベン・ハー Ben-Hur : A Tale of the Christ 1925



フレッド・ニブロ監督、MGM映画、無声。ラモン・ノヴァロほか出演。
フィルムセンターの上映はイーストマン博物館のフィルムを用い、澤登翠の弁士、音楽は湯浅ジョウイチのギター、丹原要のキーボードであった。
 
紀元前後のローマ帝国時代、属州はローマ人の横暴に苦しめられていた。イェルサレムのユダヤ人の名家の息子ジュダ・ベン・ハーは、幼馴染の友人に会う。ローマの兵として来ていたのだ。久闊を叙し我が家へ連れてくる。友人はすっかりローマ人になってユダヤ人を馬鹿にする。またベン・ハーは自分の家の、奴隷の娘とそれと知らず出会い、双方惹かれ合う。

ベン・ハーの物語と並行して、題名にあるようにキリスト生誕の話も描かれる。聖書でお馴染みのヨセフとマリヤがベツレヘムへ帰りそこで産む。馬小屋かと思ったら、かつてのソロモン王の宮殿跡という設定。東方三博士がやって来て祝福する。

イェルサレムにローマからの新提督が着く。バレードを観覧するベン・ハーの一家。行進に誤ってベランダから瓦を落とす。兵士たちが乱入し母と妹を拉致する。友人がいたのでベン・ハーは頼むが全く聞いてもらえない。ベン・ハー自身も奴隷の身となる。熱い砂漠の中を頸木に繋がれ、兵士たちに引っ張られ歩く。水を頼んでももらえない。その時ある者がベン・ハーに水を与える。実はこれはキリストだったという話。ガレー船の漕ぎ手にさせられる。

海賊がこのローマの船を襲う。海戦は戦車シーンと並んでスペクタクル場面となっている。結局ベン・ハーはローマの提督を助け、その提督から乞われ養子になる。
恵まれた生活を送れるようになるが、母や妹の行方が気になる。義父に言って母妹を捜しに出かける。かつてベン・ハーの家の奴隷だった男は今や財を成している。その娘と再会する。ベン・ハーは男に自分の身分を明かす。するとベン・ハーはガレー船で死んだ、また母妹の消息を尋ねると二人とも死んだと聞かされる。後で娘が父に確認すると、実はベン・ハーとはすぐにわかったが自分はあの家の奴隷だったので、それを明かしたくなかったと言う。

アラブの首長が騎馬戦車競走に出す予定だった、騎手が出られなくなってしまう。そこで騎手として有名なベン・ハーに出場を頼む。最初は断ったがローマの代表があのかつての友人と知る。復讐の意味もあって出場を決意する。一方ローマの代表は女を使って誰がアラブの馬に乗るか探らせる。ベン・ハーと知ると奴隷めがと罵る。勝負に途方もないカネを賭ける。いよいよ騎馬戦車競走。「ベン・ハー」と言えばここという位、有名である。無声映画とはいえすごい迫力で、後年の総天然色映画を凌ぐくらいに見えた。駒落としというか早送りで速く見せているとはすぐわかる。感心したのは脱落転倒した戦車から人を助け出すために、人々が駆け寄って元に戻るところ。その後すぐに戦車が駆ける。

ベン・ハーは勝ち、ローマの代表は瀕死の重傷となる。しかし勝っても空しい。母や妹はもういない。キリストがローマ人に捕まったと聞き、軍隊を組織して助け出そうとする。
一方母と妹は牢屋に繋がれていただけでなく、癩を患っていた。牢からは出され、かつての自分の家に来る。すると同様に少し前に来ていて、今は門前で寝ているベン・ハーを見つける。驚愕する二人。しかし自分たちは業病にかかっている。起こすこともできず別れを告げる。同病の者が集まる谷に向かう。

キリストの場面もそれなりにある。最後の晩餐もあった。磔になると聞いて、奇跡を起こせる人だから神だという者もいる。それを聞きつけたベン・ハーの恋人(かつての奴隷の娘)はベン・ハーの母と妹の住む谷へ行き、二人を連れ出す。

群衆の中、十字架を背負い刑場へ向かうキリスト。ベン・ハーはキリストに今私の軍隊が助けに来ますと言う。しかしキリストはそれを止める。自分は争いを起こすために来たのではない、と断る。娘が二人の女のキリストに引き合わせる。癩はたちまち治る。それを見つけたベン・ハー。親子は抱擁して再会を喜ぶ。
キリストが処刑されると天災地変が起こりイェルサレムの建物も倒壊する。
キリスト教の精神を讃えて終わり。

フィルムセンターの今回の企画のうち、最も賑わっていた。旗日であること、弁士つきなどの要因もあるだろう。152分の長尺であった。

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