伏水修監督、東宝映画。旅客機の設計技師(大日向傳)に想いを寄せる原節子。
新型旅客機の設計の説明会が行われる。意欲的な機であるものの、野心的な分、生産可能かどうか未知の要素が多い。慎重派の重役は積極的に支持しない。設計技師を評価する重役(進藤英太郎)は推進すべきだという意見である。
設計が始まる。設計部の部長が慎重派重役の子分であるためか、設計図作成はなかなか進まない。技師は部長が妨害していると思い、本人に問い質す。部長は風洞実験をやってからの方がいいと忠告する。尤もな意見に技師も納得、感謝する。実験の結果はうまくなく、落ち込む技師を友人の飛行士(藤田進)は慰める。
技師が重役の家を訪ね、帰る際そこの娘に送ってもらう。原節子である。彼女はピアノを弾き、自分の意見をはっきり述べる現代的女性である。帰り道で原は良く喋る。これは技師に好意を持っていたからだ。
実は技師には意中の人があった。たまたま雨のため喫茶店で居合わせた女(山根壽子)である。二人はいつもその喫茶店の同じ席で会うが、女は寡黙であまり話さない。
女は弟と母の三人暮らしである。弟は近々入営予定である。そうなると自分は母を養っていく必要がある。結婚に躊躇するようになる。例の喫茶店にも現れなくなり、技師は心配になる。女の弟が姉と話し合い、母を心配していると知ると、技師のところへ行き訳を話す。自分たちの母を面倒みてほしい、と。技師はもちろんそのつもりでいたと答える。
重役から原の気持ちを聞かされ保留していたが、技師ははっきりと断る返事をする。重役は仕事では成功したが、父親としてはうまくいかなかったと言う。
自宅で原に話す。技師は諦めろと言われ、原は衝撃を受け、ピアノの所へいって弾き、紛らわそうとする。父は今度水いらずで旅行しようと誘う。奈良がいいのではと答える。
技師と山根の結婚披露宴。挨拶した藤田は、二人を結び付けた雷様に新婚旅行の前、お礼に行くべきでないか、幸い新郎の新飛行機なら簡単に行ける、と言う。二人が新飛行機に乗り、藤田が操縦。空中で二人の仲睦まじさを見せつけられ、早々に操縦室に戻る藤田。
公開前年末に真珠湾攻撃があり、大東亜戦争は既に始まっている。映画冒頭に国民に戦争協力を促すスローガンが出る。
勝手なイデオロギー解釈が可能である。原は現代的女性、それに対して山根は伝統的な忍従的日本女性と描かれる。非常時に耐える妻として山根型の方が望ましい、原のような女性よりも。
技師と部長、あるいは重役同士はライバル関係であるが、よくあるように相手方を嫌な人間として描いていない。戦争が始まっているのに日本人同士で喧嘩でもなかろうかと。
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