今井正監督、東宝映画。実在の人物、海軍で軍艦(巡洋艦)を多く開発した将校に大河内傅次郎、その娘役で原節子が出ている。原の出番は限られており脇役である。完全に大河内の映画である。
題名は出るものの、スタッフや出演者一覧など出ず、映画になる。
大正10年のワシントン軍縮条約から始まる。日本の戦艦は米英の6割と決められる。海軍で軍艦設計に携わる一人は、上司の大河内に条約をどう思うか訊く。大河内は自分たちの仕事に励めと言う。
条約により既に建設された軍艦を湾で沈める。その音が聞こえると設計者たちは悄然とし、一人は涙を流して、大河内に感情を吐露する。自分たちの造った軍艦を同胞の手によって沈められることの悲しさを。
条約によって戦艦建設は禁止された。高性能の巡洋艦を造って対抗する。そのアイデアをいつも考える大河内。ピアノを弾く娘の原にせがまれて休日に演奏会に行く。しかしその最中も船建造ばかり頭にあり、途中で一人席を立って海軍へ行く。図書館に着くとエンジン担当の将校(志村喬)がいる。休日なのに彼も来ていたのだ。志村に対しては、より軽量のエンジンがどうしても必要と、以前会議の席上で言ったが、志村から不可能だと一蹴されていた。二人は自分のアイデアをお互い説明する。
大河内は大学に移り、学長にまでなる。病を犯して学生たちの入学式で演説をする。最後は病室で死の床にある。かつての彼の部下で、設計をしていた者たちが来て彼を讃える。
昭和19年の5月に公開された映画だそうだが、6月にはマリアナ沖海戦で日本は制空権を奪われる。そもそも2年前にミッドウェイで空母を沈められるなど完全に負け戦になっていた。それでもこういう軍人を讃える映画の類しか作れなくなっていたのだろう。
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