山本薩夫監督の東宝映画。原節子らはブルジョワ一家で、地に足のついていない生き方が家の経済的危機の中で見直しを迫られる。
映画は富士を背景とした湖のスケート場から始まる。高峰秀子演じる少女がスケートで滑っている。会社員の三人の若い男たち。その中の一人と高峰は仲良くなる。姉(原)は美人で絵を描いていると高峰は言う。
横浜の家に原、高峰らは帰る。父はなく、母と作家志望の兄を含めた四人家族である。
母は、家の財産を管理している自分の兄から驚くべき事実を知らされる。財産はすっかりなくなってしまい、何とかするために大阪に立つと言う。家族にはまだ言うなと妹に命じる。
湖で知り合った男が勤める会社へ、女学生姿の高峰が訪ねてくる。家にいても兄は小説を書いてばかり、姉は絵を、また母は生け花や百人一首ばかりで相手にしてもらえない。彼や仲間の会社員は家を訪ねる。彼は原の描いた絵を見ても少しも感心するようすがない。原の友人である舌先だけの男に、日本のローランサンだと日頃さんざんお世辞を言われている彼女からすれば不愉快になる。怒った原と男の間で、頬打ちの応酬がある。
他の会社員たちは、母である夫人の百人一首に付き合わされる。
いつまで経っても伯父(母の兄)から連絡がない。御用聞きのつけの催促は激しくなるばかり。とうとう母は家の事情、伯父の関西行きについて子供たちに話す。驚愕する兄と姉。
男は兄に向かって仕事に就くべきだ、あては自分が見つけると言う。母に向かっては生け花を趣味でなく教えてカネを稼げと。勝気な原は言われる前に自分で仕事を捜すと言う。
男は先輩に頼んで、兄に雑誌社を紹介した。しかし彼はそこへ行かず仲間と会って、ラジオの懸賞小説の話を聞き、それにうちこむことにする。もちろん小説は落選になる。
原は足を棒にして一日中、仕事を求めて面接に赴く。しかし出された条件や仕事に呆れ、相手にせず退席する。仕事を求めて歩く、若き日の原のスタイルの良さは目立つ。
会社の女社員を母のところの生け花教室へ向かわせる。しかし母はしばらくたつと百人一首をやりませんかと誘い、生け花の方はそっちのけになる。
高峰はまた会社に男を訪ね、自分は学校を辞めようかと言いだす。家族が全く現実的でないなか、彼女が一人悩みなんとかしようとする。
最後は伯父が帰って来て、経済問題は収まる。原も心を入れ替える。高峰が期待している原と男との結婚もできそうである。
本作はあまり評価が高くないそうである。確かに人物が型にはまり過ぎ、といった点はある。しかしわかりやすい映画である。なんといっても若き日の原節子(19歳)と、若いというより少女の高峰秀子(15歳)が見られる。原は堂々としているし、高峰は元気な女の子である。もっと歳の差がありそうに見える。フィルムセンターのパンフレットによれば、この二人の初共演が当時話題になったそうだ。
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