出口哲監督、日活多摩川の無声映画。断片26分。
フィルムセンターの原節子追悼特集で上映された、現存する原出演の最古作品。元は65分のサウンド版だったそうだが、残っているのは無声の断片。発声映画ではない。中間字幕入り。静寂の中での上映。タイトルも何もなくいきなり話は始まる。
二人の旧制中学生が歩いている。夏のセーラー服の原はその後をついて歩く。
甲子園を目指してきた二人だが、一人が自分は出られないと言う。その父が舶来の球技である野球嫌いであったからだ。
残る一人の投手が病気で出られなくなる。学校の仲間はどうしても投手に出てもらいたい。級友が投手の家まで父を説得に行く。父親は頑として聞かず、日本刀を振り回して追い払う。
親に言われて甲子園予選出場は諦めたものの、野球への思いは捨てきれない。浜辺で一人投球の練習をする。それを見守る原。やや遠く父親がやって来て見る。その後から青年が来て声をかける。あの通り素晴らしい投手なのだが、父親が頑固でやらせてもらえない、と相手を知らず言う。後に投手の家にその青年(同じ学校の生徒)が来る。親と知り謝る。しかし父親を説得しようとする。
最終的には父親も折れ、息子に勝ってこいと送り出す。
最後は野球場を映している所で終わり。そこはほとんどがフィルムの摩耗で白い画面。それほどでなくとも、全体的に白い斑が多い。フィルムの状態は良くない。
彼の投げる球には魂が宿っている、などいかにも戦前らしい精神主義的な台詞が出てくる。ともかく若き原節子を見る映画なのだが、後年とおりで顔が変わらない女優だと思った。
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